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20年間ひきこもりの60代男性「自宅にだれかを入れるのは怖い」【老親・家族 在宅での看取り方】

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年9月4日 9時26分

20年間ひきこもりの60代男性「自宅にだれかを入れるのは怖い」【老親・家族 在宅での看取り方】

精神科の在宅医療も需要が増えつつある(C)日刊ゲンダイ

【老親・家族 在宅での看取り方】#109

「人が怖いので、下を見ながら話していただけませんか? あと自宅にだれかを入れるのは怖いので、診療に来ていただける車の中や、うちの庭で診療を受けられませんか」

 20年間ひきこもり生活を送りながら、自宅近くのメンタルクリニックに通院していた60代の男性患者さん。症状の改善があまりみられないからと、先日、在宅医療を始めてみたいと当院に問い合わせをいただきました。

 問診結果は「社会不安症」。この疾患は比較的少人数の中においても、人から見られたり恥ずかしい思いをすることに対して極度に恐怖を感じ、人前で自分を出すことに過度の不安を覚えます。そのため社会的な交流を避け、社交場面も回避する傾向になりがちです。

 メンタル状況がデリケートな患者さんの場合は、在宅医療を始めるにあたって、それまで通院していたクリニックの医師、担当のケースワーカーさんがいる場合はその方と綿密に連携し、一般的な患者さんの事前の準備とはまた違った点に注意を払います。

 冒頭のやりとりは、何回か対面を重ねてようやくポツポツと会話ができるようになった時のものだったのでした。

 ご本人が孤独の中で暗中模索して訪問診療という答えにようやくたどり着き、がんばって声を振り絞って問い合わせをいただけるまでになったという雰囲気が伝わってくるかと思います。

「車の中でもいいですか? お時間は当日電話で教えてくださるんですよね?」

「ケースワーカーの〇〇さんとは連携をとってくださっているんですよね? 私は普段家族かその人としか話をしないものでして」

 訪問診療を重ねるうちに、それなりの信頼関係が構築され、遠慮なく胸の内を明かしていただけるようになりました。すると電話を通じてご本人の口から、不安や診療に関する疑問や確認したいことについてなど、繊細な質問や問いかけが増えていきました。

「コロナが怖いので、皆さんには失礼かもしれませんが、万全な対策をとってほしいです」

 最近またはやりつつある、コロナやかぜの症状について心配しているという旨の連絡があった時は、「ご安心ください、私たちはほかの患者さんもご病気をお持ちで、コロナにかかると重症化しやすい方が多いので、感染対策については細心の注意を払って診察に伺うことをお約束します」となるべく患者さんの目線に合わせ、安心していただけるようにお声がけさせていただくのでした。

 最近は精神科の在宅医療も需要が増えつつあります。患者さん一人一人のお気持ちに寄り添い訪問するといった在宅医療のあり方は、心のケアを必要とされている患者さんにとても合っているのではないかと考えています。

(下山祐人/あけぼの診療所院長)

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