トップを「エラい」と勘違いさせる周りの媚びへつらいが自己正当化とパワハラの元凶だ(ラサール石井)
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年9月5日 9時26分
責任を感じ辞める気配がない(齋藤元彦兵庫県知事)/(C)日刊ゲンダイ
【ラサール石井 東憤西笑】#220
最近はある程度大所帯の演劇が行われる場合、顔合わせの時に「ハラスメント講習」を受けることが多くなった。確かに一昔前までは演出家や監督が物を投げる、「死ね」と罵倒する、なんて現場はよくあった。
さすがに最近ではそういった例は少なくなってきたが、今は自覚のないパワハラが多いそうで、「一生懸命仕事して何が悪い」と本人は気が付かない。
「部下を道具と思わない」「階級の違いはない。役割の違いがあるだけ」などと講習を受けるうち、これはまんま兵庫県知事の斎藤氏に聞かせたいと思った。
客観的に考えて、彼のパワハラはグレーではなく真っ黒で、弁解の余地はないと思うが、本人は全く責任を感じ辞める気配がない。驚くほどの自己正当化。それこそがパワハラ体質なのだが、人が何人も亡くなっているのに眉ひとつ動かさない鉄面皮には空恐ろしくなる。
そもそも「知事はエラい」と思っているのが間違いだが、実はそう思わせる周りにも問題があると思う。
神奈川県知事の黒岩氏は私の大学の後輩であり、その関係でしばらくある委員会に呼ばれて出席していた。
彼は温和な人間でパワハラ体質はないが、委員会では我々委員が全員テーブルにつき、それから知事が呼ばれる。知事の歩いてくる経路の箇所箇所に職員が立ち、「知事がいらっしゃいました」「知事がいらっしゃいました」と伝言していき、委員会の部屋に「いらっしゃいました」と通され、本人は「はい」と鷹揚に応えて席に着く。まるで「お殿様のおなーりー」状態だ。
黒岩氏が悪いのではない、本人は知らないのだ。しかし毎回こうされていたら、自然とそれが当たり前になる。「私はエラい」と勘違いする人間も出てくるだろう。
この、職員の、とくに幹部職員の媚びへつらい体質が、トップを勘違いさせ権力を振りかざす地盤をつくる。
これは東京都知事も同じである。議会や記者会見における小池氏の立ち居振る舞いはまさに女帝のそれだ。
関東大震災で虐殺された朝鮮人慰霊の文をなぜ出さないかと問われ、「震災の被害に遭われた皆さまへは慰霊しております」と答え「震災の被害と虐殺とは違う」と言うと、虐殺には多くの証言が残っており国会議事録にも記載があるのにもかかわらず「さまざまな研究がある」と答える。「虐殺はなかったという研究があるということか」と聞くと、笑顔で「さまざまな研究があるということです」と答えた。
「答えになってません」と記者に叫んで欲しかった。女帝の笑みに「しつこいぞ。もう聞くな」という威圧を感じ背筋が凍った。
(ラサール石井/タレント)
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