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避難所の必需品「段ボールベッド」は災害関連死につながる睡眠不足を防ぐ

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年9月5日 9時26分

避難所の必需品「段ボールベッド」は災害関連死につながる睡眠不足を防ぐ

5分で組み立て可能(提供写真)

 関東大震災が起きた9月1日は防災の日。今年は、8月8日の宮崎県での震度6弱の地震を受けて、気象庁が「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を発表。台風10号の列島直撃などがあったことから、例年以上に防災意識が高まっている。

 万一に備えて非常食や飲み水を確保している人もいるだろうが、見落としがちなのは睡眠だ。睡眠不足はさまざまな慢性疾患の原因になることが知られているが、被災した場合、日本では避難所となる体育館などの床に直接寝る雑魚寝スタイルが一般的で、十分な睡眠が確保できない状況におかれる。

 弘邦医院の林雅之院長が言う。

「被災地では床の冷気で低体温症になったり、睡眠中にウイルスなどが付着した粉塵を吸い込むことで呼吸器疾患になったり、体圧分散がなされず安眠が確保できなかったり、エコノミー症候群など災害関連死につながる健康被害の原因となる可能性が指摘されています」

 高齢者の中には床で寝ている間に廃用症候群が進み、寝たきりになってしまう場合もあるともいわれている。

 復興庁が東日本大震災で認定された1632人の災害関連死(2012年3月31日時点)のうち1263人に対して調べたところ、約51%が「避難所等における生活の肉体的・精神的疲労」が原因で亡くなったという。その中には睡眠状態の悪化が原因の被災民も多かったはずだ。

 そこで、被災地での安眠確保の手段として注目されているのが「段ボールベッド」だ。東日本大震災発生直後に考案され、2016年4月公表の「避難所運営ガイドライン」にも推奨の記載があり、全国の自治体での導入が進んでいる。

 その有効性は多くの研究機関でも明らかにされている。例えば日本赤十字北海道看護大学などの研究では、冬季に体育館内にテントを張り、ジェットヒーターやアルミマットなどの防寒対策をして睡眠を試みたが寒さで眠れなかった。しかし、段ボールベッドを使用すると90%の参加者が眠れ、うち20%が熟睡できたと報告している。

■個人で購入するといくらかかる?

 2020年以降の新型コロナ大流行も地方自治体導入への後押しとなったものの、その数は十分とは言い難い。

 例えば科学的に想定される「南海トラフ巨大地震」が現実になった場合、静岡県から宮崎県の一部では震度7となるほか、関東から九州にかけての太平洋沿岸に10メートルを超える大津波の襲来が予想されている。

 地震発生翌日には最大480万人が避難所に集まるとの予想がある。こうなると、段ボールベッドが被災者全員に行き渡るのはまず不可能だ。

 仮に個人で段ボールベッドを購入して備えておくとしたら、いくらかかるのか? 緊急避難段ボールベッドを製造・販売している㈱セイエイドーKVSコーポレーション代表取締役の石毛照夫氏が言う。

「弊社の製品は自治体や企業の備蓄品として導入実績があり、クラフトテープは不要で、マジックテープ接合だけで完成します。ベッドサイズは長さ180センチ、幅90センチ、高さ30センチで、重さは8キロですが、女性でも5分もあれば簡単に組み立てられます」

 土台は格子構造で耐久性に優れ、平面耐荷重テストでは7トンをクリア。体重100キロの男性が寝ても大丈夫。費用は税込み1万2760円で、オプションとして寝袋が4400円となるという。

 防災は地域や身近にいる人が助け合う「共助」、国や地方自治体などが取り組む「公助」も大切だが、基本は自らの命は自らが守る「自助」であることは忘れてはいけない。

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