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人間は損失が頭をよぎるとリスクを取る意思決定をしてしまう【科学が証明!ストレス解消法】

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年9月6日 9時26分

人間は損失が頭をよぎるとリスクを取る意思決定をしてしまう【科学が証明!ストレス解消法】

損失が頭をよぎったら...理性的に判断すること(C)日刊ゲンダイ

【科学が証明!ストレス解消法】#181

 人間の意思決定における心理的要因を説明する行動経済学の理論に、「プロスペクト理論」と呼ばれるものがあります。ざっくり言うなら、「人は損失を回避する傾向があり、状況によってその判断が変わる」という理論です。

 このロジックを提唱したエイモス・トベルスキーとダニエル・カーネマンは、生死に関わる状況において、異なる言い回しが被験者の反応にどのような影響を与えるかを調査(1981年)しています。

 大きな病気にかかっている600人の人々を対象に行われたこの調査は、次の2つの治療法のどちらを選択するか求めたものでした。

 治療法Aは、「600人のうち200人の命が助かる道」と伝え、治療法Bでは、「600人全員が助かるか、全員が助からないかのどちらかである道」と伝えた──。

 その結果、被験者は治療法Aを選択する人が多かったといいます。しかし「命が助かる」ではなく、「命が失われる」と言い換えたケース(治療法Aで言えば「600人のうち400人の命が失われる道」)では、治療法B、すなわち、イチかバチかに賭ける人が圧倒的多数だったといいます。

 こうした言葉の言い換えによって、同じ情報であったとしても異なる印象を与え、意思決定に影響を及ぼす現象を「フレーミング効果」と呼びます。

 ある選択肢を「80%の成功率」と表現するか、「20%の失敗率」と表現するかによって、人の選択は変わってしまうのです。

 人間は現金な生き物ですから、先の調査を見ても分かるようにネガティブな印象を与えられると、一発逆転の意思決定をしてしまう可能性が高まるというわけです。

 こうした事実をもとに、シカゴ大学のボアズ・ケイサーらは、母国語と第2言語が意思決定にどのような影響を及ぼすか、興味深い実験(2012年)を行っています。

 実験では、外国語として日本語を学んでいるアメリカ人学生121人を対象に、「英語で提示したグループ」と、「日本語で提示したグループ」の2つに分け、次の選択を提示しました。「60万人が死に至る病気」への対策として、「20万人が助かる薬」と、「60万人が助かる確率が33.3%、誰も助からない確率が66.6%の薬」を開発されているとしたら、どちらを選択しますか? と。

 被験者たちの回答は、先のカーネマンらの実験同様、「失われる」と表現すると選択が逆になったそうです。

 その一方で、「日本語で提示したグループ」に関しては、そうはならなかったといいます。この結果を受け、ケイサーらは外国語を使うことで感情的な反応が弱まり、より客観的で理性的な判断ができるとしています。

 人間は損失が頭をよぎると、リスクを取ってまでイチかバチかに賭ける傾向にある──。であれば、損失がよぎったときは、理性的に判断することが合理的な決断へとつながる。あえて英語に置き換えて考えてみるなど、ワンクッションをつくって意思決定をしてみるといいでしょう。

(堀田秀吾/明治大学教授、言語学者)

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