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リンパ腫の免疫療法「CAR-T療法」の劇的効果と超高額薬価【がんサバイバーの知恵】

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年9月7日 9時26分

リンパ腫の免疫療法「CAR-T療法」の劇的効果と超高額薬価【がんサバイバーの知恵】

抗がん剤が効かない血液がんに有効(写真はイメージ)

【Dr.中川 がんサバイバーの知恵】

 英ロックバンド「ザ・キュアー」のキーボード奏者ロジャー・オドネル(68)がまれなリンパ腫であることを自身のXに投稿。音楽関係者やファンのみならず、話題を呼んでいます。昨年9月に診断され、手術や放射線、免疫療法を経て、いまは「素晴らしい」状態に回復しているのは、何よりでしょう。

 リンパ腫の種類や治療法の詳細は分かりませんが、劇的に回復した大きな要因は免疫療法だと思います。今回は、免疫療法について掘り下げましょう。

 一般にリンパ腫の治療では、複数の抗がん剤を組み合わせた多剤併用療法と放射線が中心です。しかし、抗がん剤が効かないと、免疫療法を行うことがあります。その免疫療法のひとつが、CAR-T療法です。彼がCAR-T療法を受けたかどうか定かではありませんが、可能性は高いでしょう。

 CAR-T療法は、患者さんの血液から免疫細胞であるT細胞を取り出して、がん細胞を攻撃できるようにCAR遺伝子を導入します。この遺伝子改変によってできたT細胞は、がん細胞の表面にある特定の抗原を認識。結合できるように設計されていて、がん細胞を特異的に攻撃する能力がアップするのです。

 体外で増殖させてより強化させてから、点滴で体に戻します。この増殖したCAR-T細胞は、血流にのって体の隅々まで循環してがん細胞を見つけると、プログラムされた通りがん細胞に結合し、がん細胞を殺すように作用するのです。これによって、特定のがん細胞が効率的に除去されます。

 前述した通り、この治療法は抗がん剤が効かない血液がんに有効です。主な薬剤はキムリア、イエスカルタ、ブレヤンジなどで、特に大細胞性B細胞リンパ腫や急性リンパ性白血病にキムリアが最も使われます。

 CAR-T細胞がターゲットとする抗原は、ほとんどのリンパ性白血病やB細胞リンパ腫の表面に発現しているため、この治療法はとても効果的です。「私は元気です。予後は素晴らしいです」と興奮気味に投稿したくなる気持ちもよく分かります。

 ネックは医療費の高さです。日本でも保険適用されていますが、CAR-T細胞そのものの薬価は3000万円を超えます。入院で抗がん剤と組み合わせて行われ、京大病院の場合、3500万~4370万円。3割負担で1000万円を上回ります。

 保険適用の治療や処置などは高額療養費制度で自己負担限度までの支払いとなりますが、食事代や差額ベッド代などは自費ですから、入院日数分だけかかります。同大の場合、入院期間は平均41日、最大98日でした。その負担も決して小さくありません。

(中川恵一/東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授)

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