認知症の「重症リハ」はどのように取り組めばいいのか【正解のリハビリ、最善の介護】
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年9月11日 9時26分
ねりま健育会病院の酒向正春院長(提供写真)
【正解のリハビリ、最善の介護】#45
認知症はサプリやリハビリで治りますといった誇大広告をよく見かけます。認知症は加齢とともに進行しますので、治る病気ではありません。ですから、本人と家族が困る症状をどうやって和らげてあげることができるのかに尽きます。われわれは24時間365日、認知症の患者さんの生活を支援しています。認知症の治療法は、環境調整と関わり方が基本です。それにはリハビリ的視点が欠かせません。それでも難しい場合に、初めて薬剤治療が必要になります。この3つの原則を覚えておいてください。
さて、認知症が重症になると、認識力や認知機能が著しく低下するため、人を認識したり、言葉を理解することができなくなるなどして、コミュニケーションを取ることが難しくなります。また、運動障害や歩行障害が生じて体を動かすことが難しくなり、寝たきりになるケースも少なくありません。
そうなると、誤嚥による肺炎などを発症して亡くなるリスクが高まります。さらに病状が悪化すると、食事を食事だと認識できなくなるため、食べられなくなります。食事や水分をとれなくなると、およそ2週間で亡くなる方がほとんどで、この2週間がいわゆる看取り期(終末期)と呼ばれる段階です。
認知症が重症になると、運動するなどして回復を目指すようなリハビリは行えません。ですから、看取り期には至っていない認知症の「重症リハビリ」では、なるべく寝たきりになることを防止して、できる限り家族とのなにげない活動を継続できるように取り組みます。
ずっと寝たままにはさせずに体を起こして、安定した姿勢で座ってもらい、可能ならば立たせてその姿勢を気持ちよく維持してもらいます。車イスに移動できるようになれば、家族などと外出することも可能です。そうなれば、家族の介助量も軽減できるようになります。
■介護=ケアと一体になっている
病状が進んで看取り期に近づいた重症リハでは、清潔を保ったり、痛みを軽減するなど、患者さんが健康的で気持ちよさを感じられるような取り組みを行います。
かつては、患者さんが食事をとれなくなると、胃ろうを設置して栄養を供給するかどうかを検討する時代もありましたが、近年は口から食べられなくなったら寿命と考えて、無理に延命はしないという傾向が主流になっています。そんなふうに、動けない、食べられない状態になれば、当然、寝たきりで衣服の着替えや入浴もままなりませんし、排泄は垂れ流しになるなど、全身が不衛生になります。それらを清潔に改善し、少しでも健康的に感じてもらうために重症リハを実施するのです。
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