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年を取って聞き返すことが増えた…認知症予防のために「補聴器」を

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年9月11日 9時26分

年を取って聞き返すことが増えた…認知症予防のために「補聴器」を

加齢による難聴は補聴器で補うしかない(C)iStock

 2017年と20年に、世界的に権威のある医学誌ランセットが「認知症の40%は予防可能で、そのうち難聴が最大の危険因子」と指摘した。中年期に難聴があると高齢期に認知症のリスクが2倍上昇するとの報告もある。慶応義塾大学病院聴覚センター長の大石直樹医師(耳鼻咽喉科・頭頚部外科准教授)に話を聞いた。

  ◇  ◇  ◇

 難聴には加齢が関係していて、年を取れば誰もが難聴となる。大事なのは、難聴が及ぼす影響をしっかり認識すること。

 冒頭で、難聴が認知症に関係しているとのランセットの発表に触れた。

 聴力と脳の関係を示した研究は複数ある。56~86歳の126人(聴力正常群75人、同低下群51人)を平均6.4年間追跡した研究では、聴力低下群で有意に脳の容積の減少が認められたという結果が発表されている。

 全米国民健康栄養調査を受けた60歳代605人の知能評価と聴力の関係に対する解析では、25デシベルの聴力低下に伴う認知機能の低下は、7年の経年変化とほぼ等価との試算。一方で補聴器使用者は、聴力低下の重症度、年齢、性、人種、教育レベル、収入を調整しても有意に知能検査のスコアが高かった。

 慶応病院での研究でも、聴力、補聴器がそれぞれ認知機能にマイナス・プラスの影響を与えることを示している。

「補聴器を使っていない55人に対し、3年以上補聴器を使っている62人は認知機能が高く、使っていない人では聴力が悪いほど認知機能も低下していました。補聴器が認知機能低下を予防した可能性が考えられます」(大石直樹医師=以下同)

 難聴は認知機能に関係するだけではない。人の話が聞き取れず、電話ができず、人との交流が減り、孤独に陥りがち。会話を楽しんだり家族とテレビを見たりといったことが減れば、生活がつまらなく、気持ちが暗くなるだろう。

「最近は、難聴が疲労感を招くことも判明しています。外国語は、母国語と比べて聞き取りに努力が必要で疲れやすくなるでしょう。難聴もそれと同様のことが起こるのです。聞き取り努力が大きく、『リスニングエフォート』(※)を大きく必要とするので、会話をすると頭が疲れやすくなります」

※聴覚情報を理解する際、妨害要因を乗り越えるために、意図的に心的リソースを配分すること

 加齢による難聴は治療困難で、補聴器で聞こえを補うしかない。

 難聴の程度は、20デシベルまでは正常、40デシベルまでは軽度難聴、70デシベルまでは中等度難聴、90デシベル以上で高度難聴と定義されているが、「中等度以上の難聴であればぜひ補聴器を使っていただきたいですし、軽度難聴であっても何か困り事があるなら、補聴器を検討してほしいです」。

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