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「秀山祭九月大歌舞伎」は若手が躍動 左近は女形の片鱗示し、染五郎は聡明な義経を演じ切る

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年9月14日 9時26分

「秀山祭九月大歌舞伎」は若手が躍動 左近は女形の片鱗示し、染五郎は聡明な義経を演じ切る

歌舞伎座(C)日刊ゲンダイ

 9月の歌舞伎座は秀山祭。初代中村吉右衛門を顕彰する目的で、2代目吉右衛門が2006年に始め、2代目没後も続いている。

 昼の部最初は『摂州合邦辻』で、菊之助が女形の大役である玉手御前、初代と2代目吉右衛門が演じていた合邦を中村歌六、秀山祭初出演の片岡愛之助が俊徳丸という配役。菊之助が玉手御前を演じるのは4回目なので、すっかり自分のものとしている。前半の本心を明かさない場面は表情を殺しきり、無による狂気を感じさせるが、後半になって狂気ではなく冷徹な計算によるものだと分かり、玉手御前の演技と菊之助の演技がシンクロする。

 続いて、夢枕獏原作の『沙門空海 唐の国にて鬼と宴す』。これは初代吉右衛門にも2代目吉右衛門にも何の関係もない演目。なぜこれを秀山祭で上演するのか、意図が分からない。

『沙門空海 唐の国にて鬼と宴す』は、空海が唐へ行ったときの話。2016年が初演の新作で、改訂しての再演。セリフが現代日本語で、歌舞伎らしさはない。それでも演劇として面白ければいいが、次から次へと人物が出てきて、立ったまま説明的なセリフを言うだけ。退屈を通り越して唖然としているうちに幕が下がり、休憩となる。ここでの拍手はまばら。後半になると、少しは盛り上がる。

 夜の部は重い古典が2つ。『妹背山婦女庭訓』は「吉野川」がメインだが、その前の「太宰館花渡し」の場もあり、物語の背景が分かりやすい。「ロミオとジュリエット」の日本版と言われるように、仲の悪い二家の男女が恋に落ちる。争う二家の親を尾上松緑と坂東玉三郎、悲恋の若い2人を市川染五郎と尾上左近(松緑の息子)。実際の親子である松緑と左近は敵味方になる。

 左近の女形は初めてだが、こんな才能が埋もれていたのかと思う見事さ。今後は女形へ進んだほうがいいのではないか。松緑の大判事は昨年国立劇場で演じて評判が良かったもので、自信をつけたのか、堂々としている。父子ともいい役にめぐりあった。
『勧進帳』は、吉右衛門が80歳になったらやりたいと言っていたもの。今年が存命だったら80歳なので、幸四郎がその遺志を継いで弁慶を演じ、菊之助が富樫、染五郎が義経。しかし幸四郎は吉右衛門の遺志は継げても芸は継げていないようで、あたふたとしているだけ。菊之助の富樫も幸四郎が相手だと、團十郎の弁慶のときと比べて迫力不足。

 染五郎は今月、三演目に出ているが、義経にいちばん気合が入っている。頼朝がこの天才をいかに恐れているかまでが伝わってくる聡明な義経。襲名の頃から弁慶をやりたいと言っていたが、出演が決まった正月に、浅草で挑むのだろうか。

(作家・中川右介)

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