高齢化進む建設業界で二重三重のひずみ浮き彫り…69歳測量士が安全確保怠った建設会社を提訴
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年9月14日 9時26分
原告の原田信二氏(左は総合サポートユニオンの池田一慶氏)/(C)日刊ゲンダイ
高齢化社会が抱える問題がまたひとつ、表面化した。
建設労働者の男性が12日、労災事故の損害賠償を求め、建設会社を東京地裁に提訴した。原告は測量士の原田信二氏(68)で、建設業界で40年以上働いてきた。被告は元請企業の竹中土木の他、1次下請企業、原田氏の直接雇用先である2次下請企業の計3社だ。
原田氏は2022年7月21日、千葉県内の建設現場だった険しい山中で測量作業を行っている際にバランスを崩し、左膝骨挫傷を負った。現在も仕事に復帰できていないという。
提訴後に都内で開かれた会見で原田氏の弁護団が指摘したのは、高齢労働者の労災の急増だ。総務省によると、昨年の雇用者全体に占める高齢者(60歳以上)の割合は18.7%なのに、労働災害による休業4日以上の死傷者数に占める高齢者の割合は29.3%に上った。
原田氏のケースでは、急斜面の作業にもかかわらず「スパイク付きの靴」などの安全器具の提供がなかった。弁護団は、「身体機能が衰えた高齢労働者への安全対策が不十分だった」と訴えた。
建設業界は高齢化が著しい。総務省によると、建設業就業者のうち55歳以上の割合は36.6%で、全産業の31.9%を5ポイント近く上回る。一方で、29歳以下はわずか11.6%にすぎない。現場では多くの高齢者が、転倒や転落などのリスクを抱えながら作業をしている。
弁護団によれば、仮にケガを負っても、泣き寝入りすることが少なくないという。高齢になればなるほど再就職が難しくなり、立場が弱くなってしまうからだ。
そのうえ、建設業界はそもそも労災の発生率が高く、昨年の労災による死亡者数は全体の約3割に及ぶ。危険な作業が多いのはもちろんだが、他にも原因がある。
■立場が弱い下請けは泣き寝入り
「建設業界には今回のケースのような重層下請構造がある。大手ゼネコンなどの元請企業からすれば余分なコストをカットしたい。立場が弱い下請けは安全対策なども含めて、声を上げることができないのです」(原田氏を支援する総合サポートユニオンの池田一慶氏)
結局、高齢者の安全まで手が回らない状態で、作業が進められている。
明らかになったのは二重三重のひずみ。業界を支える高齢者は追いつめられている。
◇ ◇ ◇
建て替え計画から一転、営業再開した五反田TOCビル。●関連記事『【もっと読む】五反田TOC工事計画 建築費高騰でストップの衝撃…建設業界で「2024年問題」ますます深刻化』では、建設業界が抱える「2024年問題」について詳報している。
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