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認知症の発症や進行予防に「料理」が有効なのはどうして?【介護の不安は解消できる】

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年9月16日 9時26分

認知症の発症や進行予防に「料理」が有効なのはどうして?【介護の不安は解消できる】

炒める作業で前頭前野が活性化

【介護の不安は解消できる】

「料理」が認知症の発症や進行予防に有効なのはご存じでしょうか。メニューや段取りを決めるには認知機能のひとつである「計画力」を使い、同時に複数の作業を行うと「注意分散機能」を働かせます。大阪ガスと東北大学が行った研究では、献立を考えたり野菜を切る、ガスコンロで炒める場面では、安静時と比較して脳の前頭前野が活性化されることが分かっています。

 料理は完成品が目に見えるため達成感が得られやすく、食べることで「食欲」といった基本的欲求が満たされます。本人は役割を持つと意欲が高まり自信を取り戻し、生活の質(QOL)の向上につながります。そうしたことから、認知症ケアと予防を目的とした料理活動を「料理療法」と定義し、現在、認知症に対する非薬物療法のひとつとして全国の高齢者施設などで広める活動を行っています。

 ある老人ホームでは、軽度認知障害(MCI)の方を対象にお菓子作りを行う「お菓子倶楽部」を半年間、2週間に1回の頻度で実施していました。リーダーもMCIの方が務め、レシピの改良から道具の準備まで、すべて参加者が主体となって行います。そこに参加した80代後半の女性は、参加当初はご自身の病状を話すばかりで表情もこわばっていました。回数を重ねるごとに表情が明るくなり、自ら率先して他の参加者に声をかけるように。6カ月後に再び評価を行うと、MCIから正常値に回復しただけでなく、QOLの観察評価(MOSES)も32点から25点へと改善し、「○○を作りたい」「○○に行きたい」など、生活の意欲が向上して、ご主人も喜ばれていました。

役割を取り上げず、料理を一緒に作る機会を

 在宅で介護されていると、ご家族は火の不始末や包丁の扱いを心配して、本人から台所に立つ機会を奪ってしまうケースも少なくありません。ですが、かつて料理をしていた人であれば手続き記憶として感覚が残っているため器用に包丁を使いこなせる場合もあります。その人の役割を取り上げるのではなく、料理を一緒に作る機会を持ってみてください。その際、ご家族は「料理を教えてもらう」立場でお手伝いをお願いし、ゴマをする、大根をおろすなどの役割を担当してもらいましょう。立ちながらの作業が難しければ、椅子に座りながらで構いません。感謝の気持ちや、「おいしいね」と感想を伝えることが非常に大切であり、自尊心や自己有用感のアップにつながります。

 一緒に料理を作る中で、ご家族にとっても「あの頃お母さんがこの料理を作ってくれたな」と当時を思い出したり、「こう味付けした方がいいのよ」と母親らしい一面が見えやすい。料理活動では、普段のケアされる側とケアする側といった立場ではなく、親として自分を引っ張ってくれていた、かつての親に“出会い直す”こともできるのです。

▽湯川夏子(ゆかわ・なつこ) 1993年、奈良女子大学人間文化研究科修了、博士(学術)。2017年4月から現職。研究分野は調理学、食育。03年から料理療法の実践研究を実施。編著書「認知症ケアと予防に役立つ料理療法」(クリエイツかもがわ)他。

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