ラフ地獄の日本シニアOPで「ゴルフの基本」を痛感…求められる強い体と無駄のないスイング(羽川豊)
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年9月18日 9時26分
通算9アンダーでシニアOPに優勝した崔虎星(チェ・ホソン)/(C)共同通信社
【羽川豊の視点 Weekly Watch】
前週の日本シニアオープンは、約25センチも伸びたラフに参りました。各ホールにはフォアキャディーがいても数メートル先に落ちたボールが見つからない。同組の選手やキャディーが総動員でボールを捜し、そこからサンドウエッジでフェアウエー(FW)に出す選手がいる一方、長いラフから150ヤード先のグリーンを狙ってラフを渡り歩き、ダブルボギーにする選手も続出しました。ドッグレッグホールでドライバーを使うとラフまで転がってしまうこともあって、片山晋呉のようにドライバーを封印して、ティーショットにスプーン(3W)やクリーク(5W)、ユーティリティーを使う選手も目立ちました。
FWとラフの違いはクラブの抜けだけではなく、縦の距離感にも影響します。たとえ5センチ程度の短いラフでも、クラブとボールの間に芝が入り、スピンコントロールができずボールを止めることができない。スピン量が減って「フライヤー」で飛びすぎることもある。ラフに曲げたら1罰打と同じ。「フェアウエーをキープする」というゴルフの基本が身に染みた大会でした。
プロツアーもかつては、ドライバーで飛距離を稼ぎ、ラフからでも短いクラブでグリーンを狙う者が多かった。そんな時代でもアプローチやパットでスコアをつくり優勝した選手もいましたが、300ヤード超ドライブを放つタイガー・ウッズが全盛を誇った2000年代以降、世界の潮流は男女とも「パワーゴルフ」に移行しました。男子のレギュラーツアーなら、今や500ヤード以上のパー4や600ヤード以上のパー5は珍しくない。コースの距離が延びたから単に飛ばせばいいというわけではなく、300ヤード先にある30ヤード前後の幅しかないFWにボールを置ける「飛んで曲がらない」という、究極のショットが求められているのです。
そのために必要なのは、強い体と無駄のないスイングです。クラブが進化しているとはいえ、飛距離を追えば体には負担がかかります。4日間72ホールで一度もラフに入れないことも難しい。体の大きな欧米選手なら太い腕だけで粘りのあるベント芝のラフから脱出できるでしょう。日本選手も1日18ホールはゴルフになっても、2日目や3日目は同じスイングができず、故障の原因にもなる。体を鍛えている松山英樹でさえ、首や背中などの故障を抱えながらプレーしているのが現実です。
先週は岩井明愛、千怜の双子の姉妹が来季の米女子ツアー参戦を目指し、12月の最終予選会の挑戦を表明しました。この流れはますます加速するし、男子の海外志向も高まるばかりでしょう。
トレーニングを怠らず、無駄な力、動きのない効率のよいスイングでティーショットの飛距離アップと精度を追求する。それが世界で戦う近道です。
(羽川豊/プロゴルファー)
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