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怪しい兵器開発計画が目白押し、目的は防衛産業へのバラマキ…自衛隊は強くならない(文谷数重/元3等海佐・軍事研究家)

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年9月19日 9時26分

怪しい兵器開発計画が目白押し、目的は防衛産業へのバラマキ…自衛隊は強くならない(文谷数重/元3等海佐・軍事研究家)

木原防衛相(C)共同通信社

【防衛予算8.5兆円 概算要求は本当に必要か】(中)

 失敗まちがいなしの極超音速ミサイル開発に防衛費3200億円を投じてよいものだろうか。

 防衛省の概算要求には、胡乱(うろん)な兵器開発計画が目白押しで並んでいる。

 まずは継続事業の新戦闘機GCAP開発である。国際共同開発に来年度だけで1300億円を要求している。斜陽化した航空機産業への補助金でしかない。

 その将来も暗い。導入中の米国製F-35には、間違いなく劣る。低性能、高価格、納期未定の三重苦となる。

 共同開発そのものも怪しい。すでに英国は政権交代で心変わりしている。日本も政権交代になれば放棄を検討するだろう。

 新規事業の衛星コンステレーションもそうだ。イーロン・マスクがつくったスターリンクのモノマネで100個規模の偵察衛星を打ち上げる計画である。来年だけでも3200億円を費やす。

 これは防衛省の身の丈を超えている。本来なら米国に頼むか、組むかである。そのための日米同盟だろう。

 そして極超音速ミサイルである。これは20キロメートル以上の高空をマッハ6から8で飛ぶ兵器だ。来年度だけでも合計3200億円を支出する計画である。

 実用性からして怪しい。「高速なので迎撃ミサイルでは撃墜できない」と説明している。ただ、命中直前には空気抵抗が大きい低空に降りる。その時は100秒でマッハ3まで減速してしまう。しかも、直線飛行になるので迎撃は容易だ。

 技術的な困難もある。空気との法外な摩擦熱が生じるためミサイル全体の冷却は必須だが、その実現は宇宙ロケット開発よりも難しい。日本の宇宙航空産業には荷が重い。

 価格も問題となる。完成しても1発30億円や50億円では数は揃わない。それなら10倍の数のトマホークを買うほうがよいとなる。

 なぜこのような事業を進めるのか。

 防衛産業へのバラマキのためである。与党が強引な防衛費増額を推進したのはそのためだ。そしてバラまくには大金を支払う名分、最先端の雰囲気がある事業が必要だ。だから新戦闘機や人工衛星、極超音速を持ち出したのだ。成功の見込みなしは承知である。

 防衛産業の業績は改善するだろう。ざっと1兆円の補助金に相当する。ただし産業は腐る。補助金で衣食すれば業界は防衛の寄生虫になる。

 また自衛隊が強くなるわけでもない。防衛産業が富んでも防衛力の強化とはならないのである。 (つづく)

(文谷数重/元3等海佐・軍事研究家)

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