レバノン一斉爆発は「前代未聞」と専門家…ポケベルと無線機に相次ぎ爆薬仕込んだか?
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年9月20日 11時32分
爆発を受け病院に運ばれる被害者(C)ロイター
想像を超える爆破の手口だ。
中東のレバノン各地で17日、イスラム教シーア派組織ヒズボラの戦闘員らが所有するポケベルタイプの通信機器が一斉に爆発。続けて18日に今度は戦闘員が所有する無線機(トランシーバー)が相次いで爆発し、2日間で死者37人、3400人の負傷者が出た。
「ヒズボラはパレスチナ自治区ガザで、昨年10月からイスラエルと戦闘状態にあるハマスとの連携を掲げる軍事組織です。イスラエルとは断続的に戦闘を続けており、7月にはイスラエルがヒズボラの軍司令官を殺害。ヒズボラは報復を宣言していました」(外信記者)
血で血を洗う状況の中、一般人まで犠牲になる“爆破テロ”が起きてしまった。しかもポケベルや無線機が爆発するなんて、誰もが想定しなかった手口。恐怖と混乱を植えつけるには十分だ。
事件が起きた背景には、今年2月、イスラエルによる通信傍受や位置特定などを防ぐため、ヒズボラの指導者・ナスララ師が戦闘員にスマホの禁止を命じたことがあるとみられている。
軍事ジャーナリストの世良光弘氏は「恐らく(イスラエルの諜報機関)モサドがその情報に目をつけたのでしょう」と推測する。
「モサドはこれまでも数々の要人暗殺を起こしていますが、ポケベルや無線機に爆薬を仕込み、一斉かつ広範囲に爆発させたことは聞いたことがありません。モサドはヨーロッパ中にアジトを持つ。レバノン国内にポケベルや無線機が納入される過程で輸出入会社などを取り込み、複数回に分けて爆発物とそれを加熱する仕掛けを仕込んだのだと思います」
前例のなかった油断からヒズボラも「機器を調べたりしなかったのでしょう」と世良氏は続ける。
「仕組みはわかりませんが、恐らく何かの信号を送ればある一定以上の高温となり、起爆するシステムだったのではないかと思われます。今回の事件でこれまで進められてきたガザの停戦協議も白紙に戻るでしょう。停戦の見込みはまったくなくなりました」
事件後にヒズボラはイスラエルに対し、「必ず罰を受ける」と報復を示唆している……。
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