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検証「ニッポンの死刑」(中)“異端児”日本に向けられる視線…OECD加盟国で執行を続ける唯一の国

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年9月26日 9時26分

検証「ニッポンの死刑」(中)“異端児”日本に向けられる視線…OECD加盟国で執行を続ける唯一の国

2008年東京・秋葉原無差別殺傷事件(事件が起きた中央通りの交差点付近で花などを手を合わせる人々=当時)/(C)日刊ゲンダイ

 日本が死刑制度を維持し、死刑執行を続けていることについて、特に厳しい視線を投げかけているのが欧州の国々だ。日本ではあまり知られていないが、欧州連合(EU)は憲法に当たる基本権憲章で「何人も死刑に処されてはならない」と規定し、死刑廃止が加盟条件となっている。EUを離脱した英国も死刑を廃止しており、欧州で死刑を続けているのは、ルカシェンコ大統領が独裁的な政権統治を続けるベラルーシだけになっている。

 駐日英国大使を務めるジュリア・ロングボトム氏に、死刑制度についての考えを聞いたことがある。外交官として過去に2回の日本勤務を経験し、日本語も堪能で、英国外務省きっての「日本通」として知られるロングボトム氏は、私にはっきりとこう述べた。

「英国と日本は非常に親しい友人であり、多くの価値観を共有しています。しかし、考え方の異なる重要な問題があります。それが死刑制度です」

 日本に死刑があることに英国人の多くは衝撃を受けるとし、死刑を廃止すれば「英国と日本の関係はさらによくなる」と言い切った。

 天皇・皇后の英国訪問もあり、日英関係は極めて良好と思っている人は多いだろう。それは、決して間違いではない。しかし、日本が死刑を続けていることが、日英の間に影を落としているのも事実なのだ。

■加藤智大死刑囚の死刑執行を非難

 2022年7月に、東京・秋葉原で無差別殺傷事件を起こした加藤智大死刑囚の死刑が執行された際には、駐日EU代表部や欧州の各国大使らが非難の声明を発表した。この前日、日本とEUなどの外相らは、ミャンマーで民主活動家ら4人の死刑が執行されたことについて非難する共同声明を出したばかりだった。日本は他国の死刑についてEUと共に反対しながらも、自国の死刑ではEUから批判されるという、なんとも皮肉な事態に陥ってしまった。

 米国では2020年の大統領選で、バイデン氏が死刑廃止を公約に掲げた。州によって死刑の存廃は分かれるが、2021年7月から連邦レベルでの死刑執行を停止した。韓国も1998年以降、死刑は執行していない。

 経済協力開発機構(OECD)に加盟する38カ国のうち、死刑制度があるのは日米韓の3カ国だが、国として執行を続けているのは日本だけになっている。その現実から目を背けていれば、国際社会との溝は深まるばかりだろう。 (つづく)

(佐藤大介/共同通信編集委員兼論説委員)

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