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健康寿命は経済力で決まる(2)ロボット手術を受けられるエリアは限られる

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年9月26日 9時26分

健康寿命は経済力で決まる(2)ロボット手術を受けられるエリアは限られる

ロボット手術に注目が集まっている(C)iStock

 医療には地域格差が付きものです。大学病院の多くは県庁所在地にありますし、有名病院の大半が大都市に集中しています。クリニックも、大都市なら専門性で選ぶことができますが、地方ではそんな贅沢は許されません。

 より深刻なのは、最先端の医療でしょう。たとえば肺がん手術です。いまでは胸腔鏡手術(胸に穴を開けて内視鏡を差し込み、その先端から電気メスや鉗子を出して行う手術)が主流ですが、それには経験豊富な外科医が欠かせません。しかし田舎に赴任してくれる医師を探すのは、かなり困難です。

 最近は、さらに胸腔鏡ロボット手術に注目が集まっています。ロボットといっても外科医が操作するもので、自動手術という意味ではありません。手術用ロボットには手ぶれを吸収するなど、外科医をサポートする便利な機能が備わっているため、普通の胸腔鏡よりも安全かつ精度よく、がんを切ることができます。

 しかしロボット手術ができる病院は限られています。2022年度に行われた肺がんのロボット手術は、全国で5636件でした。その多くが東京都(693件)、愛知県(510件)、兵庫県(460件)、大阪府(460件)、福岡県(363件)など、特定の都道府県の大病院に集中しています。秋田県、新潟県、福井県、宮崎県、沖縄県の件数は1桁ないし0でした(NDBオープンデータ:厚生労働省)。

 3位の兵庫県にしても、神戸市、西宮市、明石市などの特定の病院に限られており、内陸部や日本海側で実施できる病院は1カ所もありません。ロボット手術を希望する患者は、自力で神戸に出るか、鳥取市の病院にするかです。鳥取県は地方にしては珍しくロボット手術に力を入れており(全国12位)、鳥取市内の病院でもかなりの件数を行っています。

 ロボット手術に限らず、先端的な医療を行っている病院は限られています。地方から行くためには交通費がかかりますし、外来での検査や薬物療法・放射線療法などを受けるとなれば、宿泊費がかかることもあります。地方の患者は、それなりの経済的な余裕がないと、いい医療にアクセスできないのです。 =つづく

(長浜バイオ大学バイオデータサイエンス学科・永田宏教授)

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