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意図的に環境を整備することで意思決定や行動を変えられる【科学が証明!ストレス解消法】

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年9月27日 9時26分

意図的に環境を整備することで意思決定や行動を変えられる【科学が証明!ストレス解消法】

私たちの生活にはナッジがたくさん導入されている(C)日刊ゲンダイ

【科学が証明!ストレス解消法】#184

 私たちの意思決定は環境に左右されているといっても過言ではありません。やらなければいけない課題があるのに、スマホをいじってしまうのはなぜでしょうか? 手の届く範囲にスマホがあるからです。仮に、金庫の中にスマホを入れてロックしてしまえば、容易にスマホに触れることはできなくなります。

 車を運転しながらコンビニを探しているとき、皆さんは左側車線沿いにコンビニがあればいいなと思うはずです。それは、車を止めやすい環境であることを、私たちが認識しているからです。

 アメリカの経済学者のリチャード・セイラーが2017年にノーベル経済学賞を受賞したことで広く知られるようになった「ナッジ」という行動経済学の用語があります。端的に説明するなら「行動科学の知見を利用し、人々の選択の自由を損なうことなく環境を整えることで、本人や社会にとって好ましい行動を実現させる方法」のことです。

 実際、私たちの生活にはナッジがたくさん導入されています。

 たとえば、トイレにある「いつもきれいに使っていただいて、ありがとうございます」という張り紙。こうした張り紙を見ると、不思議と「きれいに使わなければいけない」と感じてしまうのは、まさにナッジを活用した事例です。また、コロナ禍の際に、ソーシャルディスタンスを保つために足元に靴のマークが描かれているケースが多数ありましたが、皆さん、無意識にマークに足を置いたはずです。

 興味深いのは、ある雑居ビルで放置自転車問題を解決した事例です。「迷惑しています。止めないでください」と書いてあった張り紙を、「ここは自転車捨て場です。ご自由にお持ちください」という張り紙に変更したところ、放置する人が激減したといいます。これは、「放置すれば他人に自転車を取られてしまう」という意識を喚起し、「デメリットを被る」というナッジ理論を活用したたまものです。このようにナッジは、意図的に環境を整備することで、人間の意思決定や行動をより良い方向へと導き、社会的課題を解決できるとも期待されています。

 一方で、人間の意思決定や行動が環境に簡単に左右される性質を持つことを考えると、「コントロールすることも可能なのでは?」と思う方もいると思います。

 オーストラリアのラトローブ大学のマクグラスの研究(23年)では、スーパーを舞台にショッピングカートの底に「当店で10人中9人のお客さまが野菜や果物を購入します」というメッセージを記載することで、野菜や果物の売り上げを増加させることに成功したといいます。たしかに、野菜不足の方にとっては、健康促進につながるかもしれません。しかし、そう思わせてしまう意識を喚起している以上、個人の自律を阻害する可能性を持つ操作的な行為──と言われても仕方がないことかもしれません。

 ナッジは、私たちが意識するしないにかかわらず存在しています。ナッジを勉強すれば、環境をどう整備すれば自分にメリットが生まれるかも分かるはずです。

(堀田秀吾/明治大学教授、言語学者)

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