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健康寿命は経済力で決まる(4)輸入医薬品や医療材料が危ない

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年9月28日 9時26分

健康寿命は経済力で決まる(4)輸入医薬品や医療材料が危ない

医療品の貿易赤字が増えている(C)ロイター

 医薬品や医療材料が、とんでもない状況になりつつあります。以前から輸入超過だったのですが、コロナ前から貿易赤字が増え始め、2022年の統計によれば、医薬品が4.6兆円、医療材料が1.8兆円、合わせて6.4兆円の赤字となっています。コロナワクチンの緊急輸入などもありましたが、23年以降も赤字幅が拡大し続けているとみられています。

 とくに円安が大きく影響しそうです。22年当初は、1ドル=110円前後で推移していましたが、最近は145円前後です。単純に言って、輸入品は約30%の値上がりになります。

 技術の進歩も無視できません。医薬品市場は、世界的にバイオ医薬に大きくシフトしています。がん、アトピー性皮膚炎、糖尿病、関節リウマチなどで高い効果を発揮していますし、話題の肥満治療薬「ウゴービ」もバイオ医薬の仲間です。

 ところが日本の製薬会社は、この分野が得意ではありません。バイオ医薬の世界売上高上位45品目のうち、日本発のものはたった2品目です(医薬産業政策研究所)。

 医療材料の分野も深刻です。人工関節や脊椎固定器具、埋め込み型ペースメーカー、白内障の眼内レンズなど、多くが輸入品で占められています。それらには「保険償還価格」が付いています。病院は、必要なものを輸入業者などから購入し、使用後に健保組合などに請求します。その金額のことです。しかし円安で購入価格が上がっても、償還価格は変わらないため、使えば使うほど病院が赤字をかぶることになるのです。

 そんな状況にとどめを刺すかもしれないのが、価格の「逓減制」です。多くの国では、薬価などが一度決まると、特許が切れるまでは変わりません。しかし日本では時の経過とともに、どんどん下げられてしまいます。そのため海外のメーカーにとって日本市場の魅力が弱まりつつあるのです。すでに一部の医薬品で、日本への承認申請をパスするケースが出始めているようです。

 未承認の薬や材料を使いたかったら、患者が負担して個人輸入するしかない。そんな時代がすぐ目の前に迫ってきているのかもしれません。
 =おわり

(長浜バイオ大学バイオデータサイエンス学科・永田宏教授)

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