NHK「虎に翼」は画期的な“社会派の朝ドラ”となった(碓井広義/メディア文化評論家)
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年10月2日 9時26分
伊藤沙莉(C)日刊ゲンダイ
【碓井広義 テレビ 見るべきものは!!】
連続テレビ小説「虎に翼」(NHK)が幕を閉じた。見終わって再認識したのは、この作品がいかに“異色の朝ドラ”だったかということだ。
佐田寅子(伊藤沙莉)のモデルは三淵嘉子。戦前に初の女性弁護士となり、戦後は初の女性判事となった。「あさま山荘事件」が起きた1972年には初の家庭裁判所所長に就任している。
司法界の「ガラスの天井」を次々と打ち破っていった嘉子の軌跡は、戦前・戦後における“試練の女性史”だ。それはドラマにも十分反映されており、画期的な“社会派の朝ドラ”となった。
ややもすれば堅苦しくなりそうな物語だったが、硬軟自在の伊藤に救われた。寅子が納得のいかない事態に遭遇した時に発する「はて?」は、見る側の心の声も代弁する名セリフとなった。
ただ、さすがに後半は少し詰め込み過ぎだったかもしれない。「戦争責任」「原爆裁判」「尊属殺の重罰」「少年法改正」などが並び、さらに「同性婚」「夫婦別姓問題」「女性と仕事」といった現在につながるテーマも取り込んでいった。
しかし、これも制作陣の確信犯的仕掛けだったはずだ。憲法第14条が明記する「法の下の平等」や「差別禁止」は、どのような経緯をたどってきたのか。そして、今の社会においても本当に実現されているのか。この問いかけこそ本作を貫く大きなテーマだった。
(碓井広義/メディア文化評論家)
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