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2012年ANAオープンはデジャビュで藤田寛之さんと顔を見合わせた…「林」を越え払拭した10年前の苦い記憶【プロキャディー25年 梅ちゃんのツアー漫遊記】#4

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年10月4日 9時26分

2012年ANAオープンはデジャビュで藤田寛之さんと顔を見合わせた…「林」を越え払拭した10年前の苦い記憶【プロキャディー25年 梅ちゃんのツアー漫遊記】#4

藤田さんはこの試合で通算14勝目を挙げて賞金ランクトップに返り咲いた(C)日刊ゲンダイ

【プロキャディー25年 梅ちゃんのツアー漫遊記】#4

 2002年のANAオープンは55歳のジャンボ(尾崎将司)さんが777日ぶりの復活優勝で話題になりました。1打差で惜敗したのが藤田(寛之)さんです。

 最終日、16番のバーディーでジャンボさんに並ばれて迎えた17番。有名な左ドッグレッグのパー5。ジャンボさんは1打目を右ラフに入れて2打目は前の木にシャフトをぶつけながら、ピンが狙える位置まで運びました。スーパーショットです。

 フェアウエーセンターへ運んだ藤田さんはそれを見て迷います。グリーンエッジまでは252ヤード。札幌GC輪厚コースの17番で2オンにチャレンジしたことは過去に一度あるか、ないか。その藤田さんが僕に聞きました。

「どうする? この林越えるか?」

「7対3でいけると思います」

 藤田さんは冒険するタイプではありませんが、僕の一言でスプーン(3W)を抜き、果敢に林越えの2オンにチャレンジしました。ボールは無情にも林の真ん中に吸い込まれ2オンは失敗。このホールのボギーが勝負の分かれ目でした。いつものように2打目をフェアウエーに運び、ショートアイアンでピンを狙えばバーディーが取れる確率は高く、悪くてもパーだったでしょう。優勝したジャンボさんは「藤田のあのトライは素晴らしい」とコメントしたそうですが、僕は申し訳ない気持ちでいっぱい。ロッカールームで涙が止まりませんでした。

 それからちょうど10年後。12年のANAオープン最終日。キム・ヒョンソンと首位で並び17番にやってきました。あの時と同じです。第1打が止まったフェアウエーの位置もほぼ同じ。セカンド地点へ歩いているとき、2人で思わず顔を見合わせ笑ってしまいました。

 前日までは、「17番は絶対に2オンを狙わない」と公言していた藤田さんは、ティーショットを打った直後も「絶対に狙わないぞ」と言ってたのに、フェアウエーを歩いているとき「梅、どうする?」と言うのです。これも「あの時」と同じです。

「藤田さんはこの10年間、あの林を越えるためにゴルフをやってきたんでしょ」

 僕はそう言いました。「刻みましょう」と言えば、当初のプラン通り3打目勝負にいったと思いますが、藤田さんは何も言わずスプーンを手に取り、林の上からグリーンを狙ったのです。林は越えたものの、ボールはスライスしてグリーン右手前のベアグラウンドへ。17番は3オン2パットのパーでしたが、18番は第1打を左に曲げたヒョンソンがボギーで藤田さんが勝ったのです。

 43歳になった藤田さんはこの年、史上初の日本シリーズ3連覇を含む年間4勝をマーク。悲願の賞金王(約1億7515万円)となり、2回目の最優秀選手賞にも選ばれました。僕にとっても忘れることのできないシーズンは、あの試合抜きには語れません。

(梅原敦/プロキャディー)

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