イキ過ぎ電動化も反省か？ VW Tクロスがマイチェンで質感アップを加えて値下げまでしてきた（小沢コージ）

サイズはトヨタ ヤリス クロスとほぼ同じ、全高は5mm下がった（写真）小沢コージ

【小沢コージ　クルマは乗らなきゃ語れない】

　フォルクスワーゲン Tクロス
　（車両価格：￥3,299,000／税込み～）

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　ここ最近「円安だから！」と容赦なく値上げを敢行してきた輸入車界。しかし、ニッポンのサラリーマンにお金が無いのは事実。それを知ってか知らずか、ドイツ王道ブランドのVWが意外な戦略を取ってきた。

　かつて2020年から3年連続「輸入車ベストセールスSUV」に輝き、サイズ的にも買い易いコンパクトSUV、Tクロスがマイチェンと同時に一部値下げに踏み切ったのだ。やっぱりそうこないとダメよね。

　加え最近電動化にふり過ぎて質感落ちた？と言われるクオリティ部にも存分にメスを入れてきた。

　肝心のマイチェンTクロスだが、ボディサイズは微増に留まる。標準グレードに関しては全長が2.5センチ伸びただけで4.1m台のコンパクトさをキープ。全幅も基本1.76mと変わらず国産トヨタ ヤリス クロスとほぼ同じだし、全高は5mm下がった。

内外観ともクオリティーアップ

　分かりやすいクオリティーアップはまず外観で、フロントグリルやフォグランプ造形が変わると同時に、スタイルとRラインの上位2グレードは前走車が眩しくないデジタルヘッドライトのIQライトを標準装備。合わせてリアコンビランプも立体的なX字デザインになり、前後ライト共に左右ユニットを光で繋げるラインLEDが付いた。夜は結構先進的に見えるかもしれない。

　インテリア造形は基本変わらないが、全車デジタルメーターのデジタルコクピットを標準装備。これにオプションのデジタルコクピットプロを付けると10.25インチまで大型化する。

　センターディスプレイも標準8インチ、オプションで9.2インチに拡大するのは変わらないが、外枠がモダンなiPad風デザインに進化。さらに助手席前やメーター周りにステッチ付き革調ソフトパッドが付き、随所に質感アップ。

　装備面でも上位2グレードにシートヒーターを標準装備し、スマホのワイヤレス充電は全車に標準装備。なによりイマドキオーディオブランド「beats」のサウンドシステムをオプションで入れたり、ボディカラーもキレイなクリアブルー色を追加するなど、ユーザーが喜ぶ部分を突いてきた。

最上級のRラインは約10万円の値下げ

　かたや走りは基本変わらず。ピークパワー&トルクが116ps&200Nmの1リッター直3ターボ+7速DSG（ツインクラッチミッション）は同じだが、実はエンジンがミラーサイクル化して少しエコに。モード燃費も0.1km／ℓ向上して17.0km／ℓに。走り質感も微妙に上がり、乗り心地が少し良くなった。

　先進安全も、同一車線内運転システムのトラベルアシストを標準装備。内外装&装備をキッチリ上げてきた。

　しかし本当のポイントは、装備を充実させつつ、アクティブ&スタイルの下位グレードを2万円前後の価格アップに留め、最上級のRラインでは逆に約10万円の値下げに踏み切ったこと。

　Rラインに関しては実は使用頻度の低いパークアシストを省いたゆえだが、装備に対し絶対価格を抑えたのはありがたい話。物価高&サラリー安の今、なんだかんだで「高くちゃ買えない」のは真実なのだ。

　ちょっとカッコイイ輸入車を見ると平気で600万円超えで、「買えねー」の一言しか出ない今、やっとなんとか手が届きそうなガイシャが出てきたってところですかねぇ。

（小沢コージ／自動車ジャーナリスト）