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薬は飲んでから全身に広がる前に「初回通過効果」を受ける【高齢者の正しいクスリとの付き合い方】

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年10月5日 9時26分

薬は飲んでから全身に広がる前に「初回通過効果」を受ける【高齢者の正しいクスリとの付き合い方】

クスリはどんなふうに体中に広がるのか

【高齢者の正しいクスリとの付き合い方】

 高齢者に限らず、ほとんどの人が一度はクスリ(今回は内服薬を意味します)を服用したことがあるでしょう。では、服用した後にクスリがどんなふうに体中に広がっていくかをご存じでしょうか? 今回は、普段クスリを使うときには特に意識することがない、する必要もないことなのですが、服用したクスリがどんな影響を受けるかについてお話しします。

 多くのクスリは、服用すると水分や消化液の影響で溶け、消化管(主に小腸)から体内、つまり血液中に吸収されていきます。で、このまま全身に広がっていくかというとそう簡単な話ではありません。この最初に吸収される血管のことを門脈といい、肝臓に入っていく静脈になります。つまり、消化管から吸収されたクスリは全身に広がる前に一度肝臓を通るわけです。

 ここで、「クスリって肝臓で代謝されるんだよな」と気づいた方もいらっしゃるでしょう。その通りで、そういったクスリは全身に広がる前、効果を発揮する前に一度肝臓で代謝(分解)を受けることになります。これを「初回通過効果」といいます。初回通過効果によってクスリの効果がなくなってしまうようであれば問題外なので、そうならないように一錠あたりの成分量を増やすなどの工夫がなされています。

 面白いことに初回通過効果を逆手にとっているクスリもあります。たとえば、服用したときには効果を示さずに、肝臓で代謝(分解)を受けることで初めて効果を示す形になるように設計されたクスリもあるのです。このように、体内に入ってから全身に広がったり患部に到達するまでの間に効果を発揮するようにデザインされたクスリを「プロドラッグ」と呼びます。皆さんが服用しているクスリの中にもプロドラッグがあるかもしれません。

 投与経路で初回通過効果を回避することもできます。門脈を通らなければよいわけですから、内服薬でなければよいということになります。例を挙げると、注射薬、貼付薬、座薬、吸入薬、そして狭心症の発作時に用いられる舌下錠などがそれにあたります。

 こう聞くと、初回通過効果はクスリにとってはあまり好ましくないイメージを持たれるかもしれませんが、本来は異物が体内に入ったとしても全身に広がる前に代謝して無毒化するという体の防御システムとして非常に重要なものです。

 ご自身が使っているクスリがどんなふうに体の中で動いているのかをイメージするのも面白いかもしれませんね。

(東敬一朗/石川県・金沢市「浅ノ川総合病院」薬剤部主任。薬剤師)

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