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「高次脳機能障害」と「認知症」…症状がほぼ同じなのに、治療法がまったく異なる理由

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年10月9日 9時26分

「高次脳機能障害」と「認知症」…症状がほぼ同じなのに、治療法がまったく異なる理由

ねりま健育会病院の酒向正春院長(本人提供)

【正解のリハビリ、最善の介護】#49

「高次脳機能障害」と「認知症」で現れる症状は実はどちらもほぼ同じです。しかし、その病態は異なるので、症状の変化がまったく異なります。

 このため、治療法もまったく変わります。

 共通する症状としては、注意力低下(集中力が続かず、ミスが増えて作業を長く続けられない)、遂行困難(臨機応変に行動できない。計画を立てることができず、指示がないと行動できない)、記憶障害(新しいことやさっきやったことを覚えられず、同じことを何度も言う)、社会的行動障害(すぐに怒ったり、こだわりが強くなったり、イライラして暴力をふるう。すぐに疲れて意欲が低下する)、病識や見当識の低下(自分の問題点がわからなかったり、時間・場所・人がわからなくなる。重症では家族がわからない)を認めます。

 高次脳機能障害は、脳卒中や脳外傷、脳炎の後に生じる脳損傷に伴う症状です。ですから、脳損傷が生じた急性期が重症になります。それが、回復期、慢性期と時間が経過すると、徐々に軽快します。そのため、高次脳機能障害は良くなる障害だと思われがちです。

■復職がいちばんのリハビリになる

 しかし、重症の高次脳機能障害では改善は難しく、自己管理も不十分となり、不清潔になり、問題行動が生じてしまいます。この症状が長期化して、高齢になると徐々に悪化するようになり、認知症に移行します。このため、高次脳機能障害の場合、可能な範囲で回復させ、復職していただくことがいちばん大切なリハビリになります。復職して就労するか、誰かの役に立つ活動をしたり、気分を豊かに活動したりしないと、徐々に症状が進行して増悪しやすい傾向があります。

 復職が難しいようであれば、「精神障害者保健福祉手帳」の申請が助けになります。この手帳のメリットは、税金の控除や免除、公共サービスの割引(公共施設の利用料金割引や交通機関の運賃割引)、福祉手当や補助金の受給資格、公営住宅への優先入居権、医療費の支援(障害者医療制度を通じて医療費の補助が可能)があります。

 一方、認知症は、加齢による脳萎縮に伴って、記憶障害、注意力低下、遂行困難、見当識の混乱、社会的行動障害が徐々に生じ、日常生活に支障を来します。そして、これらの症状は徐々に確実に進行して悪化していきます。

 65歳未満で発症する若年性認知症を含め、認知症は急激に症状が進むわけではありませんし、症状の現れ方も人によって変わってきます。そのため、高次脳機能障害と同じく、認知症でも働ける状態であれば復職することが重要なリハビリになります。

 認知症の患者さんが復職して就労するためには、①病状が安定すること②自分が働きたい意思があること③日常生活が自立すること④感情を抑えられること⑤自分の障害を説明できる病識を持つこと⑥いろいろな障害を代償して就労ができること⑦通勤が自立すること⑧週5日を就労する体力があること……の8項目が必須となります。この8項目を獲得させるリハビリが「復職リハビリ」で、それを可能にしてくれるリハビリ医療チームと就労支援所を選択しなければなりません。

 このなかで、①、②、④は薬物治療が必要なケースも多くあります。前回お話ししたように、認知症の重症度や症状によって有効な薬は変わってきますので、それをしっかり把握して症状を改善させる投薬ができる医師にかかることが大切です。

(酒向正春/ねりま健育会病院院長)

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