がんの放射線治療…最新装置「イーソスセラピー」の実力
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年10月9日 9時26分
放射線治療と仕事を両立する人も(C)日刊ゲンダイ
がんの放射線治療に用いる装置は進化を重ねている。どの装置によるかで、治療成績が異なる可能性もある。高精度放射線治療専用装置「ETHOS Therapy(イーソスセラピー)」を最近導入した自治医大付属病院放射線治療科の白井克幸教授に放射線治療の最前線を聞いた。
正常臓器を避け、がんにピンポイントで放射線を強く照射できる「高精度放射線治療(左の囲み参照)」の登場で、放射線治療の成績は向上。予後が非常に悪い進行がんでも、薬物療法との併用で生命予後が劇的に延びている。
放射線治療の成績向上に一役買っているのが「画像誘導放射線治療(IGRT)」、そしてさらに進んだ「即時適応放射線治療」だ。
「従来の放射線治療では、まず治療計画用のCT検査を行い、その画像情報をもとにどこへ照射するか、1~2週間かけて治療計画を作成します。ただ、がんの病変や臓器は体内で日によって変動しています。そこで放射線治療時は、CTなどでがんの位置を確認し、がんの位置が変動している場合は、照射範囲の中心軸をずらす(=IGRT)。位置再現精度は向上しており、IGRTが登場したことで、がんの位置が変動しても適切に治療を行えるようになっています」
ただ、がんによっては、位置だけでなく、臓器が大きく変動するものもある。例えば膀胱がんでは、尿量によって1~1.5センチほど変動することは珍しくない。すると照射範囲の中心軸を変えるだけでは対応しきれない。そこで即時適応放射線治療だ。
■これまでの装置とどう違う?
「即時適応放射線治療では、がんの位置の変動だけでなく、形状の変動にも対応できます。AIを用いた専用の装置によってその日の臓器の位置関係や状態に合わせて照射範囲を調整し、即時に適応させた放射線治療を行えます」
もちろん、前述のようにIGRTでもがんの変動には対応できる。
「ただ、従来のIGRTでのCT画像は不鮮明なこともあり、ピンポイントとはいえ、本来のがんの大きさ、形状よりも数ミリの余裕を持たせて照射範囲を計算しています。一方、即時適応放射線治療ではもっとがんの形状に合わせ、よりピンポイントに照射できる」
膀胱がんに対する即時適応放射線治療の有効性を示した研究では、病変を狭く照射でき、周囲の臓器の線量も低減するとの結果が出たと報告されている。
即時適応放射線治療は、それに応じたCTまたはMRIが必要。CTでは、米バリアン社の装置「ETHOS Therapy」のみが対応可。自治医大病院では、「ETHOS Therapy」の中でも最新式のHyperSightを導入しており、アジア太平洋地域では他に例がないという。
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