船井電機の先行きは不透明に…株式は仮差し押さえ、上田智一社長が不可解な辞任
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年10月12日 9時26分
ヤマダ電機との再提携までは良かったが(2017年)/(C)共同通信社
【経済ニュースの核心】
AV機器メーカーの船井電機(大阪府大東市)の株式について、東京都のネット広告会社が仮差し押さえを申請し、9月初めに東京地裁がこれを認める決定を出していたことが明らかになった。関連会社の広告代金の未納が原因とされる。また、上田智一社長(51)が9月27日付で辞任した。理由は明らかにしていない。
船井電機は、船井哲良氏が、1951年に個人経営のミシンの卸問屋「船井ミシン」を創業したのがはじまり。ほどなくミシンの自社生産・海外輸出を行うようになり、59年にトランジスタラジオの製造に乗り出す。91年にアメリカに進出し、テレビの販売を開始。中国で生産されたVHSデッキを内蔵したフナイの激安「テレビデオ」は、市場を席巻した。2000年には船井哲良氏は日本人として初めて米国版長者番付であるフォーブスの「Billionaires」に名前が載ったほどだった。
また、国内では船井哲良社長はヤマダ電機の山田昇社長と個人的な縁があり、06年にヤマダ電機と業務提携。その後、いったん提携関係は解消されたが、17年に再提携し、船井電機の屋台骨を支えている。
だが、2010年代以降、中国・台湾メーカーとの競争が激化し、フナイの激安テレビデオをもってしても利益を上げられなくなった。さらに16年にフィリップスの家電事業買収が破談となり、175億円の違約金を支払うことになった。船井電機は特別損失を計上するなど2年続けて赤字に転落。3年間に社長が3度代わるなど、経営が混乱した。
その混乱のただ中の17年7月、創業者の哲良氏が死去。相続した長男の船井哲雄氏(医師、旭川十条病院院長)は、船井電機顧問の板東浩二氏(元NTTぷらら社長)の仲介により、出版会社、秀和システムグループ代表の上田智一氏に経営を託した。上田氏は21年5月に船井電機をTOB(株式公開買い付け)で買収し非上場化、同年7月に船井電機の社長に就いた。
船井電機を買収した上田氏は、業績が悪化していたテレビ事業からの脱却を掲げ、23年4月、脱毛サロン「ミュゼ」を展開するミュゼプラチナムを買収。美容事業を新たな柱に据えた。
船井電機のつまずきは、このミュゼ買収に始まる。上田氏は買収したミュゼを1年弱後の24年3月に売却している。「実はミュゼプラチナムはネット広告会社に対して多額の負債を抱え、船井電機がこれに連帯保証をしていた。この債務の返済が進まず、ネット広告会社が東京地裁に対し、船井HDが所有する船井電機の株式の仮差し押さえを申し立てていた」(大手信用情報機関)というのだ。
船井電機は突然のトップ辞任に、「現在、新たな経営体制がスタートし、経営計画を策定していく段階にある。計画は早期に公表したい」としているが、先行きは不透明だ。
(小林佳樹/金融ジャーナリスト)
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