10月の薄暮に急増…交通事故に注意したい「目」の病気
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年10月12日 9時26分
薄暮に集中する交通死亡事故は10月~12月に急増(写真はイメージ)
日没が早まるこれからの季節は、夕方の運転や歩行に特に気をつけたい。交通死亡事故は日没時刻の前後1時間の「薄暮」の時間帯に集中しており、10~12月に急増する。特にある種の目の病気を抱える人は要注意だという。「自由が丘清澤眼科」(東京・目黒区)の清澤源弘院長に聞いた。
警察庁がまとめた令和元(2019)年~5(2023)年における交通事故発生状況によると、17~19時台の薄暮の時間帯に集中しており、10~12月が多かった。
興味深いのは、交通事故死は薄暮の時間帯では「自動車対歩行者」の割合が急増することだ。しかも、「薄暮時間帯における『自動車対歩行者』死亡事故類型別件数」(令和元~5年)によると、死亡事故の8割は横断中に起きており、その7割が横断歩道以外の道路での横断で発生していた。死亡した歩行者の多くは高齢者だった。
原因は10月以降、薄暮の時間帯にドライバーや歩行者などの目が慣れないうちに暗くなり、歩行者や車が見えづらくなるからだ。なぜ薄暮だと見えづらいのか?
「高齢者の多くが加齢により網膜の光を感じる機能が低下しているうえ、暗順応時間の延長が起きやすい病気を抱えていることも一因ではないでしょうか。特に注意したいのは緑内障、加齢黄斑変性症、網膜色素変性症、糖尿病網膜症などの目の病気のある方です」
暗順応とは、目が時間経過とともに暗さに慣れていく現象を言う。暗さに慣れるには目の網膜の細胞のうちでも、光そのものを感じる桿体細胞の感度が、視物質の再生産を介して増す必要がある。
「ヒトの目にはカメラの絞りと同じで、網膜に入る光の量を調節する虹彩があり、暗くなると瞳孔が開いてなるべく多くの光を取り入れようとします。しかし、それだけでは暗さに慣れて物を見ることができることの説明ができません。桿体細胞の光に対する感度自体が増す必要があります」
桿体細胞内のロドプシンが光によって分解され、暗い環境では再生成がなされる。この再生成が進むことで、桿体細胞の感度が高まり、暗い環境でも視覚が確保される。このロドプシンが増えるには時間がかかる。そのため暗順応の完了までには30分かかるといわれている。
逆に暗い場所から明るい場所に移動したときにはロドプシンが分解され、網膜上の桿体細胞に代わって網膜上の錐体細胞が主に働く。このときの「明順応」は数秒で完了できる。
「明順応よりも暗順応の方が完了まで長い時間がかかるため、目が暗さに慣れるまで長い時間がかかるのです」
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