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見栄晴さんは偽陽性でホッ…PET検査が“万能”ではない根拠【中川恵一 がんサバイバーの知恵】

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年10月12日 9時26分

見栄晴さんは偽陽性でホッ…PET検査が“万能”ではない根拠【中川恵一 がんサバイバーの知恵】

安心して韓国へカジノ旅行できた見栄晴さん(C)日刊ゲンダイ

【Dr.中川 がんサバイバーの知恵】

 ステージ4の下咽頭がんで闘病中のタレント・見栄晴さん(57)が自らのSNSに転移の恐れがあったことを投稿。不安が募った気持ちを語っていて、話題を呼んでいます。

 一連の報道などによると、8月末にPET検査を受けたところ、光る部位が見つかり、転移が疑われてMRI検査を受けたそうです。その結果が9月末に判明すると、幸いにして問題はなく、「1ヶ月曇りがちな不安だった気持ちも晴れて、急遽、友人らと弾丸韓国カジノ旅行!に行ってきました」と元気な様子をアピールしています。

 今回は、PET検査について紹介しましょう。がんは、ブドウ糖を栄養素として成長するため、その消費量は通常の細胞に比べて3~10倍。その性質を利用した放射線装置がPETです。ブドウ糖に近い成分の放射性物質を静脈で注射すると、がんらしき細胞にそれが集まって画像で見えるようになります。

 1994年にPETが登場した当初は、がんの転移を含めた病巣の広がりや再発を調べるための検査で、原発巣を見つけるためではありませんでした。ところが一部の検診クリニックが「あらゆるがんが見つかる」といった誇大広告を打ち、そこに一部のマスコミも便乗して報道したことなどもあり、“PET神話”が誤解として広がりました。

 ブドウ糖の代謝を利用しているといっても、代謝が促進されている再発がんは数ミリをとらえることもよくありますが、取り込みが少ない早期がんは判断が難しい。PETにも、得手不得手があるのです。

 苦手の代表が胃がんで、特に早期の胃がんは分かりません。胃カメラが最も優れています。腎臓がんや膀胱がん、前立腺がんなども、PETが苦手ながんです。

 PETで早期がんが見つかりやすいのは、大腸がんと甲状腺がんですが、甲状腺がんはこの連載でも何度か取り上げているように過剰診断、過剰治療の問題があります。つまり、見つけなくてもいいがんを見つけることで、不要な手術などが行われ、それによって患者さんは後遺症で苦しむ恐れです。

 国立がん研究センターのがん予防・検診研究センターは、ある年のがん検診でのPET検査陽性率を解析。がん総合検診を受けた3000人のうちがんが見つかったのは約150人でしたが、PET検査で陽性となったのはわずか15%でした。PETは85%を見逃したことになります。

 PET検査は万能ではありません。早期発見を目指すがん検診には不向きということです。

 今回の見栄晴さんのPET検査で見つかった病変は偽陽性でしたが、PETは再発や転移を見つけることを目的として使うべきです。

(中川恵一/東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授)

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