「おはよう日本」ではクレームも多かった…「あなたを見ていると憂鬱になる」とか(武内陶子/フリーアナウンサー)
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年10月13日 9時26分
武内陶子さん(C)日刊ゲンダイ
【武内陶子「今があるのは…」】#6
地方局を経て初めての東京局で「NHKニュースおはよう日本」の大役を務めた。感じたのは全国放送のスケールの大きさだった。
全国放送に出演すると多くの方に見られますよね。局にはクレームもたくさん来ました。
「目の下のクマが気になるからどうにかしろ」とか「あなたを見てると憂鬱な気持ちになる」とか。
ある日、番組の最後は明るく締めたいと考えて「今日も一日お元気で!」と言いましたら、病院に入院中の方から「私は今日にも明日にも命が知れないような毎日なのに、あなたに『一日お元気で』と言われると本当に落ち込む」と書かれたお手紙をもらったんです。
まったくそのような視点を持っていなかったので驚きました。その時に「いろんな方がいらっしゃるんだな」と気づかされて。それからはエンディングで「良い一日をお過ごしください」と言うようにしたんです。これなら、一人一人それぞれの良い一日だから、みんなに共通するだろうと思い、変えてみたんです。
クレームってしんどいですし、中にはムチャぶりの方もいるんですけど、それはそれで自分の表現を考え直すきっかけになるんです。
最初の頃はテレビの前に何千万人もいるという感覚が薄くなる時がありました。
朝のニュースだとスタジオに出演者と制作スタッフで5、6人しかいませんから、大勢に見られているという感覚はなかなか持てないんですよね。考えすぎると緊張しますし。
「目の下にクマがある」とクレームが来る前は若気の至りで、「見た目よりも私は伝えたいニュースがあるのよ!」と考えていましたが、クレームが来てからは、見た目もきちんとしないと伝えたいことも伝わらないということに気づき、ちゃんとお化粧にも気をつけるように。
すると「今日の武内さんはとても明るい顔で、ホッとしました」というお手紙が来て、クレームから一転、応援団になってくれることもありました。
こちらの気持ち次第で視聴者の気持ちもやわらぐと知り、「一つ一つを大事にする」ということを「おはよう日本」で学びました。
放送するということには責任があり、でも、気にし過ぎると身動きがとれなくなる。そこのあんばいが若い頃は難しかったです。
「おはよう日本」まで朝ばかりだった私は、その後にいくつかの番組を経て「スタジオパークからこんにちは」へ。6月という改編期とはズレた時期の交代には同期の有働ちゃん(有働由美子)が突然ニューヨークに行くことがきっかけで……。
(武内陶子/フリーアナウンサー 構成=松野大介)
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