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カモシダせぶんさん 5年前に火事で自宅全焼…財産ほとんど失うも気づいた「大事なこと」とは

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年10月15日 9時26分

 ニオイも耐えがたいほどひどく、火が消えたといっても、そこで1泊もできる状態ではありませんでした。実家も事情があって帰れなかったので僕はその日から宿なしに。

 心配したお笑いの同期が健康ランドに1泊する費用を出してくれました。

周囲の援助に、優しい人に囲まれて生きていると気づかされた

 その後も部屋の清掃やリフォームが終わるまで親戚や当時のコンビの相方らが部屋を提供してくれました。清掃などの費用は火災保険と公的支援でほぼまかなえたのですが、半年もかかったうえ、コロナ禍に入ってしまったので、みんなには感謝しかありません。

 宿だけではありません。洋服から生活用具から何もかもなくなったのに売れない芸人の僕には買うお金が十分にない。どうしたかというと、これもみんなのおかげで、何とかまかなえたのです。

 アルバイト先の書店の先輩は火事見舞いとしてアマゾンギフトのポイントをすぐに送ってくれました。図書カードをくれたファンが何人も。親戚の援助もありました。みんなの優しさが身に染みました。僕はこんな優しい人たちに囲まれて生きているんだと気づかされました。

 ひどい火事にもかかわらず、やけどや落命する人が出なかったことにも救われました。もしそんなことになっていたら、僕は今頃、芸人なんてやれていないでしょうから。

 実は火事にあった日、読みかけの中国のSF小説「三体」(早川書房)を持ち歩いていたのでこの本だけは無事だったんです。「三体」は太陽光線で星が燃えて滅亡する話。財産のほとんどは燃えてなくなったのに、燃えた話の本だけ生き延びたなんて不思議です。

 さらに2年後、三部作の「三体」の最終巻の発売日に一連の出来事をツイッターで発信したら、なんと中国の作者の劉慈欣先生からサイン本が送られてきたんですよ。不幸中の幸いがたくさんあった出来事でしたね。

(聞き手=中野裕子)

▽本名:鴨志田道秋(かもしだ・みちあき) 1988年7月、神奈川県川崎市出身。松竹芸能タレントスクール東京校10期生。3度のコンビ結成と解散を経て、2024年5月、「オオトウ」と「デンドロビーム」結成。ピンでは「現役書店員芸人」としてバラエティー番組などで推薦本を紹介。「BibliobattleoftheYear2023」(読売新聞社主管)新人賞受賞。24年、「探偵はパシられる」(PHP研究所)で小説家デビュー。

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