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老老介護中の奥さまから電話…私ひとりでは旦那を持ち上げられない【老親・家族 在宅での看取り方】

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年10月16日 9時26分

老老介護中の奥さまから電話…私ひとりでは旦那を持ち上げられない【老親・家族 在宅での看取り方】

訪問介護は地域医療システムの要(C)日刊ゲンダイ

【老親・家族 在宅での看取り方】#175

「旦那が転んで私では持ち上げることができないんですが、どうしたらいいですか?」

 ある日、1本の電話が私たちの診療所にかかってきました。80代のご主人を自宅で介護する、同じ80代の奥さまからのご連絡でした。奥さま自身はご病気は患われてはいないものの、60キロはゆうにある旦那さんを持ち上げ、抱え、ベッドに戻すことは難しい。

 このような時に私たちがまず行うことは、患者さんが転倒したときにどこを打ったのかの確認です。もしも頭を打ち付け、そのためにめまいや吐き気などの訴えがある場合は緊急性があると考え、すぐに往診に伺います。しかしそのような症状はなく、明らかに緊急を要するような事態でないと判断した場合は、訪問看護と連絡を取り、ベッドに患者さんを運ぶよう要請をします。

 このように緊急性の有無や患者さんの状況に応じて、私たち医師が対応するか、訪問看護が対応するか、分かれるのです。

 重要となる訪問看護の役割ですが、主な役割としては、訪問し体温や脈拍、血圧などを測定、健康状態の評価を行う病状の観察とバイタルチェック。点滴や注射、褥瘡(床ずれ)の処置、カテーテル管理などの医師の指示に基づいた医療ケア。食事や排泄の介助。

 その他にも家族に対して介護方法の指導や、相談を通じての支援。また終末期においては、患者さんが最期まで望む生活を自宅で送れるようにするため、痛みのコントロールや精神的な支援も含めたケアを提供したり、また在宅介護全般に関する精神的・肉体的な負担軽減のための家族へのサポートなど多岐にわたっています。

 多くの訪問看護は、医師の訪問診療より頻回に患者さん宅へ訪れることになり、しかも時にすぐ駆けつける必要があるため、訪問看護の事業所は患者さん宅からなるべく4~5キロなどの距離と決めています。一方、私たち訪問診療の診療範囲は広く、16キロです。ですから転倒といった場合にも、はたして緊急性があるかどうかについてはご家族では判断できないとは思いますが、まずは体を起こしベッドに戻すといった生活に身近な支援を訪問看護にお任せすることが多くなります。

 このように身体的介助といった、訪問看護のサポートに頼るべき時には頼り、そうでない医療的な判断が求められるといった場合には、私たち訪問診療の医師をはじめとしたスタッフの役目という具合に役割分担を行うわけです。

 役割分担は、患者さんにとっても、そして医療・介護従事者にとっても負担を減らし、より適切なサービスを行うことにつながり、患者さんやご家族が安心して療養できる療養環境をつくることにつながると考えるのです。このような幅広い役割を担う訪問看護は、いまや地域医療システムの要ともいえるものです。そんな訪問看護の役割について、もっと社会の中で認知が進むことが重要だと考えるのです。

(下山祐人/あけぼの診療所院長)

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