整形外科医が教える体メンテナンス(1)変わってきた「慢性腰痛」の治療法
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年10月16日 9時26分
腰痛、肩こりを放置している人も多い
9月後半まで続いた猛暑の影響で、何となく体の調子が悪いという人も多いかと思います。この時期の不調は「秋バテ」と言われていますが、年間を通して日本人の体の不調で多いのが腰痛と肩こりです。
厚労省の調査(令和4年国民生活基礎調査)では、有訴者率(病気やけがなどで自覚症状がある人)のトップが腰痛、2位が肩こりと上位を整形外科関係の不調が占めています。
にもかかわらず「腰痛・肩こりは年のせいだから仕方ない」と、放置している人も多いのではないでしょうか。
長年、腰痛・肩こりの患者を診てきた整形外科専門医の冲永修二氏(東京逓信病院整形外科)は「腰痛も肩こりも病名ではなく症状名。原因はさまざまなので、まずは原因を見つけ、それに応じた対処をすることが重要です」といいます。
腰痛の原因には、椎間板ヘルニアや変形性腰痛症といった整形外科の病気の他に腎臓や子宮など内臓の病気や心因性のもの、まれですががんの転移や大動脈解離など命にかかわる病気が隠れていることもあります。
「元となる病気を治すことが最優先なのは言うまでもありませんが、実は、腰痛でもっとも多いのが、検査しても原因がはっきりしない『非特異的腰痛』なのです」(冲永医師=以下同)
このタイプの腰痛は、痛みの持続期間で2種類に分けられ、痛みが1カ月以内のものを急性腰痛といい、ぎっくり腰はこれに含まれます。痛みが3カ月以上のものが慢性腰痛です。
「急性腰痛は鎮痛薬やリハビリといった従来の治療を行いますが、慢性腰痛は最近、治療法が変わってきています。というのも、痛みが長く続く原因の一つが痛みを感じる脳の神経の変化にあることがわかってきたからです」
そのため、従来の治療以外に、脳神経に作用する薬などを使い、とくに重症の場合は心療内科、精神科と協力して治療を行うようになってきたそうです。治療の進歩で長引く腰痛から解放される人も増えています。
「慢性腰痛の患者さんには、痛くなるのが怖くて体をあまり動かさない人が多い。それが筋肉や神経、さらには体全体の衰弱につながり、やがてささいなことで痛みを感じるようになる。こういった悪循環が起こることもあるのです」
その悪循環を断つ方法として冲永医師が勧めるのが運動療法です。
「人により症状や原因が違うので、専門医のアドバイスで行うようにしてください」
腰痛のための運動には筋肉を鍛えるための腹筋や背筋運動、柔軟性を高めるための腰・背中・太ももの裏側のストレッチなどがあり、これらを組み合わせて行います。運動療法は整形外科医や理学療法士の指導で行うことが大切です。 =つづく
(医療ジャーナリスト・油井香代子)
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