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トリプルネガティブ乳がん…新たなメカニズムの薬の登場で診療はどう変わる?

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年10月16日 9時26分

トリプルネガティブ乳がん…新たなメカニズムの薬の登場で診療はどう変わる?

トリプルネガティブ乳がんは転移・再発を起こしやすい(写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ

 乳がんには、大きく分けて5つのタイプがある。そのうちの一つ、「トリプルネガティブ乳がん」に新たな薬が登場した。海外ではすでに使われていたが、日本でも製造販売が承認され、使えるようになったのだ。どんな薬なのか? そもそもトリプルネガティブ乳がんとは? 名古屋市立大学大学院医学研究科共同研究教育センター臨床研究戦略部特任教授の岩田広治医師に聞いた。

  ◇  ◇  ◇

 トリプルネガティブ乳がんの新たな治療選択肢となったのは、「トロデルビ(一般名サシツズマブ ゴビテカン)」という薬だ。抗体薬物複合体という、抗がん剤など他の薬と異なるメカニズムの薬になる。

 抗体薬物複合体を構成しているのは、「抗体」「抗がん剤」「リンカー」の3つ。リンカーは、抗体と抗がん剤を血液中で安定して複合させる働きをする。

「抗体薬物複合体は、簡単にいうと、抗体に小さい抗がん剤がくっついているものです。抗体薬物複合体を投与すると、がん細胞の表面に発現した抗原を目印に抗体が血液中を進んで抗原と結びつき、リンカーが分解され、抗がん剤が活性化してがん細胞を攻撃します。かなり強力な抗がん剤ですが、がん細胞へ届けて効果を発揮するので、体への有害性は軽減できます」(岩田医師=以下同)

 がん細胞をピンポイントで狙って攻撃する薬として分子標的薬があるが、分子標的薬と抗がん剤のそれぞれの長所を併せ持つのが抗体薬物複合体になる。

 乳がんは、手術ができる場合も、手術、薬物、抗がん剤を組み合わせて治療を行うことが多い。

 薬物療法でどの薬を使うか、治療計画を立てる上で重要になるのが病理検査でわかるサブタイプだ。これは、何によって増殖するタイプかを示す。最も多いのが、女性ホルモンによって増殖する「ホルモン受容体陽性」タイプ。HER2タンパクというタンパクによって増殖するタイプは「HER2陽性」タイプ。女性ホルモンも、HER2タンパクも増殖にかかわっていないタイプは「トリプルネガティブ」となる。

「ホルモン受容体陽性なら女性ホルモンを抑制するホルモン療法が、HER2陽性ならHER2タンパクを抑制する抗HER2療法が適しています。さらには、ホルモン受容体陽性の一部と、HER2陽性では抗がん剤治療も行います。一方、トリプルネガティブ乳がんではホルモン療法や抗HER2療法は効果がなく、これまで使える薬は抗がん剤、2021年から再発・転移のトリプルネガティブ乳がんに対して保険適用となった免疫チェックポイント阻害剤でした。今回、新しく薬が承認され、治療選択肢が増えたことになります」

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