第二次大戦時の芝居「セツアンの善人」は、今の世界にぴったり当てはまる(ラサール石井/タレント)
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年10月17日 9時26分
【ラサール石井 東憤西笑】#226
ずっと稽古してきた芝居「セツアンの善人」が本日、10月16日からいよいよ開幕する。
原作はベルトルト・ブレヒト。ドイツの劇作家で代表作は「三文オペラ」。演出は数々のブレヒト作品を演出してきた白井晃氏。
ブレヒトの名前を聞いたことがあるだろうか。私もそれほどよく知っているわけではないのだが、「ちょい難しい芝居」というのがざっくりとした印象だった。ストーリーに起承転結があり、観客が主人公に感情移入して、最後には涙やハッピーエンドのカタルシスがあるといった従来の演劇とは違う。いやむしろ、そういうものを否定して、観客が芝居にのめり込もうとすると、逆に芝居がそれを断ち切ってしまう。これは登場人物が観客に話しかけたり、突然歌が始まり、場面が変わる「異化効果」と呼ばれる手法なのだが、皆さんは「え、別に珍しくないじゃん」と思われるだろう。そうなのだ。今やこういった手法は多用され、日本の小劇場でも珍しいことではない。とくに井上ひさし氏の作品は大きく影響を受けているように思われる。
しかし「セツアンの善人」が上演されたのは第2次世界大戦時。ドイツを離れ、ナチスの迫害から逃げながら書かれ、上演された。当時にしてはかなり前衛的だっただろう。
お話はいかにも童話のようで、セツアンという貧しくすさんだ中国の架空の街に3人の神様が善人を探しにやって来る。若い娼婦のシェンテの親切に「善人であれ」とお礼の金を渡して去る。しかしシェンテは善行を施せば施すほど、他人からつけ入られて破滅していってしまう。
「この世に善人は存在できるのか」というテーマは、今のこの世界にぴったりと当てはまる。白井演出は舞台美術に無機質なプラスチックやゴミを多用し、セツアンの街を表現。
時にはそこが空港ロビーや被災地の避難所、がれきのウクライナやガザ地区にも見える。
主演の葵わかなさんはNHK「わろてんか」で主演した、見た目はとても可愛い愛くるしい女優さんだが、芯が強く、まさに役にピッタリで、しかも歌がうまく、今回もかなり難解な歌を見事にこなしている。相手役は木村達成くん、現在大河ドラマ「光る君へ」で三条天皇を演じる骨太なイケメンだ。
ほかにも多種多様な出自から集まった個性的な俳優陣がたくさん、群衆シーンではどこを見ても面白い。
私はなぜか赤信号の小宮と一緒に、神様のひとりをやっております。
(ラサール石井/タレント)
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