非鉄大手のJX金属が来年上場へ…ENEOSからの“親離れ”で生じる財務の不安
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年10月17日 9時26分
(JX金属のHP)
【経済ニュースの核心】
社内では安堵や期待、不安など複雑な感情が交錯しているらしい。石油元売りトップ、ENEOSホールディングス(HD)の完全子会社で非鉄大手のJX金属が東京証券取引所への上場申請に踏み切った。
順調に審査が進めば2025年3~4月にもIPO(新規株式公開)が実現する見通し。時価総額は7000億円を超えるとみられ、今月23日に上場予定の東京メトロ(東京地下鉄、時価総額約7000億円弱)を上回る大型上場となる。
ENEOSHDは保有JX金属株の50%超を放出する見込み。JX金属は持ち分法適用会社となってひとまず“親元”を離れる。
親会社は買収した再生可能エネルギー専業のジャパン・リニューアブル・エナジー会長も含め、22年から3年連続で経営トップが女性に対する「ハレンチ行為」で辞任・解任されるなど不祥事を連発してきた。業界内では「再生不能エネルギー会社」といったヤユも飛び交っているほど。JX金属もそうした風評被害の渦中に巻き込まれてきただけに「これでようやくイメージ刷新へのスタートが切れる」と胸をなで下ろす社員も少なくない。
出世への期待感も漏れてくる。ENEOSHDは旧日本石油が中核となり、業界再編を主導する形で誕生した。それだけに旧日石勢、それも人事畑出身の営業経験者が幅を利かせ、「我が世の春を謳歌してきた」(事情通)。IPOによりそんな旧日石のくびきからも「部分的に解放される」(JX金属関係者)というわけだ。
■足を引っ張るチリの銅山開発プロジェクト
一方で財務上のリスクに直接さらされることへの懸念の声も上がる。JX金属は主力の銅事業でたびたび多額の損失を出し、その後始末を親会社の資本基盤の厚みに頼ってきた。
中でも足を引っ張ったのが6000億円以上をつぎ込んだチリのカセロネス銅山開発プロジェクト。生産トラブルなどで複数回にわたって減損計上を強いられ、苦境に立たされた。
権益の一部を売却したことで現在はリスクが軽減されているとはいえ、銅市況とその需要動向によっては業績が大きく左右されかねない。損失処理をすべて「親任せ」にすることは許されなくなる。
同社では6割の世界シェアを誇る半導体の薄膜材料などに事業の軸足を移して成長を手繰り寄せていく方針だが、道筋はなお不透明だ。
(重道武司/経済ジャーナリスト)
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