老化細胞を取り除く「ワクチン」「薬」は競争が激化している【長寿研究のいまを知る】#6
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年10月17日 9時26分
■順天堂大と東大で注目研究
これを応用した老化細胞除去の研究が世界中で行われ、日本でも研究が進んでいる。
2021年には順天堂大学の研究グループが蓄積した老化細胞に対する抗体を作り、これを除去するワクチン開発成功を発表。ターゲットは、老化した血管内皮細胞の表面にあるGPNMBと呼ばれる老化抗原(目印)。開発されたワクチンを投与すると血管や臓器にたまった老化細胞に対する抗原が作られ、白血球などの免疫細胞が異物と認識して攻撃して体外に排出するという仕組みだ。
同研究グループによると、このGPNMBワクチンを高脂肪食で飼育したマウスに投与したところ、食後血糖値が低下したほか、肥満による糖代謝異常も改善、血管内のプラークも軽減した。また、早老症マウスに注射したところ、最大30週の寿命が40週まで延長したマウスもいたという。
さらに、人間なら70歳代の高齢マウスにこのワクチンを投与したところ、運動量や歩行速度が50歳代のマウス並みに改善し、フレイル(加齢や疾患により心身が老い衰えた状態)の進行が抑制されたという。
一方、老化細胞内で細胞死のプログラムを誘導する、セノリティックスと呼ばれる老化除去薬の開発も進んでいる。
「2021年に東京大学の研究グループが老化細胞だけを取り除くことに成功したと発表しました。老化細胞が生存するのに必要な遺伝子群を探索した結果、GLS1と呼ばれる遺伝子が関係していることを見つけ、老齢マウスにGLS1阻害剤を投与すると、さまざまな組織や臓器の老化細胞が除去され、加齢現象が有意に改善したというのです。GLS1は、グルタミンをグルタミン酸に変える酵素で、その過程でアルカリ性のアンモニアを大量に作ります。一方、老化した細胞は本来、酸性化して死んでいくのですが、GLS1を活性化することで細胞内が中和され、生き延びている。そこでGLS1阻害剤でそれを阻止して生き残れないようにするのです。興味深いのは、とくに肥満性糖尿病、動脈硬化、非アルコール性脂肪肝の改善に有効であり、筋力の維持にもつながったことが報告されたのです」
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