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がんと血管病を併発したデーモン閣下…手術の順番はどうなる?【中川恵一 がんサバイバーの知恵】

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年10月19日 9時26分

がんと血管病を併発したデーモン閣下…手術の順番はどうなる?【中川恵一 がんサバイバーの知恵】

デーモン閣下(C)日刊ゲンダイ

【Dr.中川 がんサバイバーの知恵】

 音楽家のデーモン閣下が早期がんのほかに、大動脈の病気にかかっていたことを告白し、話題を呼んでいます。突然、重い病気を2つも突きつけられ、動揺したようですが、このようなことは決して少なくありません。今回は、こういうときの対応について考えてみましょう。

 これまでの報道によると、今年2月の内視鏡検査でステージ1の早期がんが見つかり、4~5月にかけて入院して手術を受けたことを6月に公表しています。今回、新たに公表されたのは、そのがんの術前検査で指摘された異常について。それが、大動脈のコブのようなものだったそうです。

 がんの切除と大動脈の切除をめぐって、医師の間では慎重な検討がなされ、結論が出るまで2カ月ほど要したとのこと。その結果、がんを切除してから、大動脈の手術を受けたといいます。

 大動脈は心臓から拍出された血液が最初に通る血管で、その名の通り人体の中で最も太い。大動脈の手術の合併症で「声を失うことがある」と指摘されたのは、声帯の動きを支配する反回神経への影響を指していると思われますから、推測するに大動脈の異常は胸部大動脈瘤でしょう。

 そのコブが小さいうちは症状はなく、普通に生活していても問題ありません。大きくなると声のしわがれやのみ込みにくさ、腹部や背部の痛みなどが生じ、破裂する前に治療することが大切です。破裂すると、致死率が極めて高いのです。

 がんの検査で胸部の異常が見つかったことから推し量ると、がんは胃がん、食道がん、肺がんなどでしょうか。これらのがんの治療と胸部大動脈瘤の治療とで、どちらを先にするかが検討されたのでしょう。

 一般に治療の順番を考えるときに重要なのは、生命を脅かすリスクの高さを重視します。よりリスクの高いものから治療して、リスクの低いものに移行するのが基本的な考え方です。

 閣下の場合、まずがんを治療したということは、ステージ1でも進行が速いタイプだったのかもしれません。その一方、動脈瘤の大きさは破裂するほどではなく、がんの手術を優先できる時間があると、最終的に判断されたのでしょう。

 しかし、破裂の危険性が高ければ、まず動脈瘤の治療が優先されたと思います。リスクに応じて柔軟に対応することが重要です。

 今回は、がんと血管の病気でしたが、がんが複数あるケースも同様で、より生命のリスクの高いがんから治療することになります。たとえば、前立腺がんや甲状腺がんは、がんの中では穏やかで進行が遅いことも少なくありません。これらのがんと肺がんが重なったとすれば、肺がんの治療を優先する、といった具合です。

 閣下は、かつて広島県のがん検診啓発キャラクターを務めていたようですが、2つの病気を早期に見つけて治療できたことは、検診が目的とするところですから、ラッキーだったと思います。

(中川恵一/東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授)

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