秋ドラマ注目は共同脚本の安達祐実「3000万」とベテラン演出陣のフジ月9「嘘解きレトリック」(桧山珠美/コラムニスト)
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年10月20日 9時26分
安達祐実(C)日刊ゲンダイ
【桧山珠美 あれもこれも言わせて】
秋ドラマが続々とスタートしている。せめて初回だけはすべて見ようと思ったら、毎日が千本ノックのよう。すっかり寝不足になりそうだ。
今期ドラマでまず注目なのはNHK土曜ドラマ「3000万」。主演は安達祐実。彼女の夫役を演じるのは青木崇高。他に名前と顔が一致するのは刑事役の野添義弘(劇団スーパー・エキセントリック・シアター)と愛希れいか(元宝塚月組娘役トップスター)くらいのもので、キャスティングだけを見れば地味。
注目すべきは脚本で、複数の脚本家が共同執筆するという新しいチャレンジをしているところだ。海外ではシリーズを制作する際に複数の脚本家が分業し、担当することが一般的とか。NHKも2022年から脚本開発チーム「WDRプロジェクト」を立ち上げ、その第1弾として制作されたのがこの「3000万」だ。
仮に自分が脚本家の立場なら共同執筆などもってのほか、最初から最後まで全部ひとりで書きたいと思うが、そんなことは一部のベテランにのみ許されることで、いずれ共同執筆が当たり前になる日が来るのだろうか。
それもこれもこのドラマにかかっているといっても過言ではない。2話までの放送を見た限り、「ふ~ん」という感じ。NHKによると「いまを生きる人たちの悩みや空気感を生々しく取り込んだ、スタイリッシュで、情熱的で、エモーショナルな没入感のあるドラマが完成しました」とのことだが、今のところは……。
配信に負けるな
一方、これは面白い! と食いついたのは「嘘解きレトリック」(フジテレビ系)。鈴鹿央士と松本穂香のダブル主演のキャスティングもフレッシュ。
昭和初期を舞台に鋭い観察眼を持つ貧乏探偵・祝左右馬と「人の嘘を聞き分ける」奇妙な能力を持つ浦部鹿乃子が繰り広げる「レトロモダン路地裏探偵活劇」ということだが、セットや衣装、小道具の一つ一つに至るまで実にこだわり、原作コミックに対するリスペクトを感じる。
エンディングで演出陣に鈴木雅之、永山耕三という懐かしい名前を見つけた。永山は「愛しあってるかい!」「東京ラブストーリー」「ひとつ屋根の下」……、鈴木は「世にも奇妙な物語」「ロングバケーション」「HERO」……と、フジのドラマの黄金時代を築いてきた人たちだ。
月9の凋落ぶりをなんとかすべく、ベテラン演出家が集結したのか、人手不足でやむを得ずなのかはわからないが、久々に見応えのあるドラマに出合えてうれしい。
「SHOGUN 将軍」に「地面師たち」「極悪女王」と配信ものが話題だが、テレビドラマも負けじとそれぞれのやり方で戦っている。
(桧山珠美/コラムニスト)
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