「足がすくんで…あの瞬間はまるでアニメのようだった」レスリング74キロ級銀 高谷大地が振り返る壮絶死闘【日本代表選手が明かす!パリ五輪㊙ウラ話 】
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年10月20日 9時26分
──精神的にも追い詰められていたのですか?
「(精神的疲労は)簡単に言えば飽きてしまいました。約半年にわたって同じ日々を過ごし、毎日、同じ時間に起きて、同じものを食べて、練習は工夫してましたが、同じ時間に帰宅して就寝するという繰り返しで新鮮味がなかったのです。ルーティンが少しでも崩れると、ストレスを感じたり、そういった積み重ねが一気に爆発しました」
──体が動かなくなり、不安はありませんでしたか?
「実は試合前になると、いつもあることなんです。コーチやトレーナーからは『(浮き沈みは)五輪本番前の準備運動だよ』と言われていました。僕は自分自身に期待してなかったですし、周囲からも期待されていなかったと思うので、僕の中では勝敗よりも大事なものを見つけられればいいなと思っていました。スポーツの意義だったり、自分が歩んできた道のりはどういったものだったのかとか、自分の哲学を探したかったのです。自信もなければ、勝ちたいというよりも、練習通りに戦うにはどうすればいいかを考えてやっていました」
──本番は理想的な戦いができましたか?
「実際に戦ってみて、この1年でこんなに伸びるんだと実感しました。これまで課題だった力負けすることもなく、対等に戦えた。あの大舞台で、緊張感を持って戦えたのは良かったし、それ以上に得たものが多かった」
──新たな発見があったのですか?
「生の声援は素晴らしかったです。米国選手とやった準決勝は当初、会場が揺れるぐらい相手への声援が多くて萎縮してしまいました。会場が揺れるほどだったので足がすくんでしまって、普段は取られない技でポイントを取られたり、今までは反応していたのに足が動かなかった。あの試合のあの瞬間だけはアニメのようでした。ここまで会場の雰囲気にのまれるのかと思いましたね」
──試合会場は完全アウェーだった?
「試合途中から、日本語で『頑張れ』という声が聞こえてきて、声援の後押しを受けて足が前に進むようになりました。アニメやドラマのように自分が奮い立つような声援があるんだと気付かされました。序盤から、自分を応援してくれる海外の人もいました。米国の星条旗を持ちながらも僕に声援を送ってくれる人もいたので、国は関係なく、とにかく面白い試合を見せてくれという感じでみんなが応援してくれました。スポーツはアスリートだけがやっているのではなく、会場の人も一緒に戦っていると感じたので、日本のスポーツ、特にレスリングでも応援の文化が根付けばいいですね」
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