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命を延ばす薬(1)心不全患者に対する「アルドステロン拮抗薬」

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年10月22日 9時26分

命を延ばす薬(1)心不全患者に対する「アルドステロン拮抗薬」

薬を使えば長生きできる?

 薬を使えば、痛みや発熱などの症状が抑えられるだけでなく、薬を使わない人より長生きできると信じている人は多い。しかし、薬は診断基準や治療効果測定のための検査数値は下げられても、長生きを担保するものばかりではない。そこで今回は、「心臓病」に関連して飲めば延命が期待できる薬の実際を専門家に聞いてみた。

 心臓のポンプ機能が低下する心不全を発症すると、低下する血圧を維持しようとアルドステロンと呼ばれるホルモンが分泌されます。体内でその量が増えると、血圧が上昇し、体に水分がたまりやすくなります。

 しかし、この状態が長く続くと、心臓にかかる負担が大きくなり、心不全の状態がさらに悪化する悪循環を招くことになります。

 心不全の治療薬は多岐にわたりますが、β遮断薬やACE阻害薬と並んで、アルドステロンの作用を抑えるアルドステロン拮抗薬という薬も広く用いられています。心不全患者1663人を対象とした臨床試験では、アルドステロン拮抗薬である「スピロノラクトン」という薬を投与すると、プラセボの投与と比べて、死亡リスクが35%、統計学的にも有意に低下しました。

 また、心筋梗塞を経験した心不全患者6632人を対象とした臨床試験では、アルドステロン拮抗薬である「エプレレノン」という薬を投与すると、プラセボの投与と比べて、心臓病に関連した死亡や入院のリスクが15%、統計学的にも有意に低下しました。

 さらに、臨床試験3件を統合解析した研究論文では、心不全を有する患者にアルドステロン拮抗薬を投与すると、プラセボを投与した場合と比べて、41.3日の延命効果が得られました。

 なお、このデータは3年間の調査期間に基づく解析結果であり、実際の寿命を踏まえると、より長い延命効果が得られるものと考えられます。仮に調査期間と延命効果が比例するのであれば、30年間で413日の延命効果が得られることになります。ただし、この延命効果の見積もりは、単純計算に基づく筆者の仮説にすぎません。

 一方、スピロノラクトンやエプレレノンのようなアルドステロン拮抗薬は、高カリウム血症と呼ばれる副作用が発現しやすく、特にスピロノラクトンでは、高カリウム血症による死亡例も報告されていました。そのような中、高カリウム血症を起こしにくいアルドステロン拮抗薬であるフィネレノンという薬が2022年に承認されています。

 フィネレノンもまた、心不全を有する6001人を対象とした臨床試験で、プラセボの投与と比べて、心不全の悪化および心臓病による死亡リスクが14%、統計学的にも有意に低下することが示されています。そのため同薬は、心不全患者に対する副作用リスクの低い延命薬として、大きな期待が寄せられています。

(青島周一/勤務薬剤師/「薬剤師のジャーナルクラブ」共同主宰)

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