資金力と勝敗は永遠の課題 今季リーグ優勝決定戦に出場した4球団中3球団が金満だったが…(鈴村裕輔)
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年10月23日 9時26分
ワールドシリーズ進出を決めたヤンキース(C)ロイター/USA TODAY Sports
【メジャーリーグ通信】
大谷翔平(ドジャース)の10年7億ドルという史上最高額での契約には及ばないまでも、大リーグにおいて高額の契約を締結する選手の姿は珍しくない。
今季が終わればまた新たな大型契約が人々の関心を集めることになる。
契約金額の高騰と最低年俸の改定に伴い、大リーグの平均年俸は毎年上昇している。あたかも2004年にコミッショナーであったバド・セリグが残した「今や諸君は黄金時代にいる」という言葉を実証しているかのようである。
ところで、今年のリーグ優勝決定戦に出場した4球団のうち、ドジャース、メッツ、ヤンキースが今季の球団別年俸総額の上位10傑に入っており、下位10球団からはガーディアンズ(21位)のみが残った。年俸総額が上位のチームが好成績を収めるという事実は大リーグに限らず、さまざまなプロリーグでしばしばみられる現象である。ドイツのプロサッカーリーグであるブンデスリーガでチーム別で最高の年俸を支払っているのが史上最多のリーグ11連覇を達成したFCバイエルン・ミュンヘンであることなどは顕著な事例となる。
実際、成績が良ければ収入の根幹であるシーズン入場券の予約販売数の増加をもたらし、さらには企業によるスポンサー契約や広告の出稿も増える。こうして手にした資金でさらに優れた選手を高額の契約で招き入れたり、設備の充実や選手の育成などに投下したりすることができるのだから、成績と収入の好循環がさらなる勝利をもたらすと考えることは当然かもしれない。
その一方で、昨季のレンジャーズ、22年のアストロズ、21年のブレーブスなど、球団別の年俸総額の上位5傑に入らない球団が大リーグの頂点に立っていることを考えれば、年俸総額が最後の勝利に直結するわけではないという議論にも説得力を与える。この場合、重要なのはゼネラルマネジャーや監督の手腕を最大限発揮することで、選手の持つ能力を可能な限り引き出すことである。
00年から03年までのアスレチックスのように年俸総額は下位ながら4年連続ポストシーズンへの進出を可能にしたことなどは、金銭の不足を人間の知恵で補うことに成功したことを示している。
それでも、得意としたデータ重視の野球が普及したことで他球団に対するアスレチックスの強みが失われ、近年は成績不振による観客の減少に直面し、最終的に本拠地の移転へと発展した。財政基盤の強弱と勝敗の関係は、これからもスポーツ界にとって永遠の課題なのである。
(鈴村裕輔/野球文化学会会長・名城大准教授)
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