介護状態を防ぐ「酒向メソッド」の高齢者トレーニングとは?【正解のリハビリ、最善の介護】
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年10月23日 9時26分
ねりま健育会病院の酒向正春院長(C)日刊ゲンダイ
【正解のリハビリ、最善の介護】#51
高齢者で、筋肉、骨、脳神経をきっちりと鍛え続けている場合、認知症になる方はあまりおられません。しかし、鍛えることをやめてしまうと、認知症に進行する方がいらっしゃいます。つまり、「脳筋相関」があるのです。筋肉を動かすことは骨を強くして脳も動かすことになり、脳が刺激されるため認知症予防の効果があるとの報告もあります。
また、筋肉を鍛え続けることで、糖尿病を予防でき、肥満やそのほかの疾患も予防できる可能性が高いと考えられます。
50歳以上になると、毎年1%の筋力と筋肉量が減少するといわれ、80歳になると筋力は若い頃から30~50%低下します。
筋肉量は65歳以降に低下速度が加速して、80歳で30~50%の筋肉が失われるため、太ももが細くなり、おしりも小さくしわしわになってしまいます。80歳でも、弾力のある太ももとお尻を保つことが活動的な人生の基盤になり、歩行機能や転倒予防に極めて重要です。
高齢者の筋萎縮が抗重力筋で進行しやすいことは、すでにお話ししました。①頭板状筋(頭部を伸展・回旋する筋肉)②僧帽筋(背筋を伸ばして肩甲骨を安定させる筋肉)③広背筋(背中を覆う大きな筋肉で、腕を動かしたり、呼吸を助けたり、姿勢を維持する筋肉)④大腰筋(股関節を折り曲げたり、姿勢を保つ筋肉)⑤殿筋群(股関節を伸展、外旋、外転、内転する筋肉で、体重を支えて股関節を安定させる筋肉)⑥脊柱起立筋(体幹を伸展させる筋肉)⑦大腿四頭筋(太ももの表を形成する筋肉)⑧ハムストリング(太ももの裏を形成する筋肉)⑨ヒラメ筋(ふくらはぎの筋肉)の筋萎縮は、姿勢保持や基本動作を低下させます。とりわけインナーマッスルである大腰筋は萎縮しやすく、腰痛の原因にもなるため、意識して鍛えなくてはいけません。
■個別のメニュー作成が必要
ここで、「科学」が重要になってきます。高齢者の筋力を維持するには最大筋力の20~30%以上の負荷が必要です。さらに、筋力を増強するには最大筋力の40~50%以上の筋力が必要になります。ですから、すべての人のすべての筋肉において、筋トレのプログラムは個別に作成しなければなりません。高齢者の筋トレには、セラピストやパーソナルトレーナーによるメニュー作成が必要なのです。
それでは、高齢者の筋トレは具体的にどのようにすればいいのでしょうか。筋トレには、高強度、中強度、低強度トレーニングがあり、そのすべてが有効です。
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