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見知らぬ病院で母を逝かせたくない…何とか家に連れて帰りたい【老親・家族 在宅での看取り方】

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年10月23日 9時26分

見知らぬ病院で母を逝かせたくない…何とか家に連れて帰りたい【老親・家族 在宅での看取り方】

自宅で最期を迎えたい…

【老親・家族 在宅での看取り方】#116

 私たちの診療所で在宅療養をされていた患者さんが、ある時、容体が急変。救急搬送されたことがありました。その娘さんから切羽詰まった口調の電話がかかってきました。

「『何かあったら119番せずに、まずは電話を』と先生に言われていたのに、慌てて救急車を呼んでしまいました。母は意識がなく、病院からは『良くなる見込みがないから』とほかの病院への転院を勧められています。よくわからない病院で母を見送るのは避けたくて、できれば家に連れて帰りたいんですが、どうにかできないでしょうか」

 この娘さんとは、お母さんの最期について綿密に話し合ってきており、その時にも気兼ねなく胸の内を明かしていただいていました。そのため、この電話に対して私たちは戸惑うことなく、「お家に帰りましょう」と言いました。そして、再び自宅で最期を迎える準備を行ったのでした。

 患者さんが寝たきりや意識不明であっても、自宅への移動は民間の救急車を利用するなどして十分に可能です。ただ、寝たきりの患者さんであればいくつか在宅医療サービスがありますが、意識がない患者さんに対してはサービスがおのずと限られてきます。救急搬送された病院の医師もそれを考慮して、自宅へ戻るのではなく転院を、という形で提案したのでしょう。

「医療用ベッドをレンタルしているんですけど、母は意識がある時、医療用のベッドだと狭いってずっと文句言っていました。最期は慣れ親しんでいるセミダブルのベッドを使いたいと言っていたので、できれば替えたいんです。もちろん医療用のじゃないので介護の負担とか、その他医療のスタッフさんには少しご不便があるかもしれないですが」(娘)

「医療用のベッドじゃないとできない処置っていうのはないです。懸念点は介護の負担だったり、褥瘡(床ずれ)予防のマットレスのサイズが少し合わないというところですが、もしそれでも元々のベッドがご希望ということでしたら、それでも大丈夫ですよ」(私)

「わかりました。マットレスのことは業者さんにも相談してみます」(娘)

 お母さんを自宅に連れて帰るために、娘さんは一生懸命、さまざまな事業者へ連絡し、調整されていました。それもこれもみな母の最期を自宅で迎えさせてあげたいという思いからでした。

 こうして自宅での態勢を整えていたところ、病院の医師から「状態が厳しく、転院はおろか入院中にその時が来るかもしれません」と告げられたのでした。お母さまを敬い希望する最期を迎えさせてあげようと手を尽くした娘さんでしたが、現実は厳しいものとなったのでした。

 やがてそんな現実も受け入れ覚悟を決めたと、娘さんは病室で涙を流しながら話されていたことを、担当のケアマネジャーさんから伺いました。

 私たちは、ひたすらご家族の意向を聞き、今できることを探すことに集中するしかできません。

 そして、患者さんとご家族にとって限られた大切な時間を、たとえかなわぬ事態となったとしても最後まで後悔のないように使い切ることをお手伝いすることも、また在宅医療の果たす大切な務めだと考えるのです。

(下山祐人/あけぼの診療所院長)

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