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命を延ばす薬(3)「スタチン」の延命効果は5年間の追跡調査で12.6日

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年10月24日 9時26分

命を延ばす薬(3)「スタチン」の延命効果は5年間の追跡調査で12.6日

実際は6倍の延命期間も

 悪玉コレステロールの値が高くなると、血管の内側にコレステロールが蓄積しやすくなります。コレステロールが血管の内側に蓄積していくと、徐々に血管の弾力性が失われ、動脈硬化と呼ばれる状態が引き起こされます。動脈硬化の状態では、血管の内部が詰まりやすくなり、心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクが高まります。そのため、薬によってコレステロールを下げる治療が行われます。

「スタチン」と呼ばれる薬は、コレステロールを下げるだけでなく、動脈硬化を予防することで、心筋梗塞などの心臓病や脳卒中の発症リスクを低下させると考えられています。実際、いくつかの臨床試験では、スタチンの投与によって心臓病の発症リスクが2~3割ほど減少することが報告されています。

 スタチンはまた、心臓病や脳卒中を予防することで、延命効果も得られる可能性が報告されています。スタチンの有効性を検討した臨床試験16件を集めて統合解析した研究によれば、スタチンを服用した人では、プラセボ(スタチンの偽薬)を服用した人と比べて、12.6日間の延命が得られました。

 たった12.6日だと思われるかもしれませんが、この解析結果は、臨床試験の調査期間を5年と想定して得られた延命期間であり、実際の寿命で考えれば、より長い延命期間が得られると考えられます。

 もし仮に、臨床試験の調査期間と解析結果が比例しているのであれば、30年間の調査期間では、6倍である75.6日(約2カ月半)の延命期間と見積もることができます。もちろん、この見積もりは仮説にすぎませんが、スタチンの延命効果をより想像しやすいデータだと思います。

 この研究ではまた、過去に心臓病を発症した人では、スタチンの延命効果がさらに長くなる可能性も示されており、プラセボを服用した人に比べて、スタチンを服用した人で17日間の延命が得られました。

 2020年には、心臓病を原因とする死亡に対するスタチンの延命効果を検討した研究も報告されています。臨床試験19件を集めて統合分析したこの研究では、プラセボを服用した人に比べて、スタチンを服用した人で、心臓病による死亡が9.3日延長していました。

 この結果もまた、臨床試験の調査期間を5年間と想定して得られた延命効果であり、実際の寿命に換算すると、より長い延命が得られると考えられます。この研究ではまた、スタチンの服用によって、心筋梗塞の発生が18日ほど延長され、脳卒中の発生が6日ほど延長される可能性も示されています。

(青島周一/勤務薬剤師/「薬剤師のジャーナルクラブ」共同主宰)

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