1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 芸能
  4. 芸能総合

遅刻癖を仲代達矢が一喝「おまえは時間通りじゃなく、1時間、2時間前に来ておけ」【役所広司論/金澤誠】

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年10月25日 9時26分

遅刻癖を仲代達矢が一喝「おまえは時間通りじゃなく、1時間、2時間前に来ておけ」【役所広司論/金澤誠】

役所広司(2005当時)/(C)日刊ゲンダイ

【役所広司論】#2

 仲代達矢が主宰する「無名塾」の塾生だった役所広司は、どんな俳優だったのか。塾では岸田国士の戯曲やシェークスピアの古典劇のレッスンがあり、あとは仲代や先輩俳優が演じている姿を見て学ぶ。ちなみに彼が入塾する前にいた先輩には神崎愛や隆大介がいた。

 入塾して半年たった頃、仲代の舞台公演でいくつかセリフを言う役をもらい、公演では俳優の他に大道具などの裏方も経験。全国を旅公演する中で仲代が一つの役をつくり上げていくさまを間近に見たことが、一番の勉強だったと役所は著書「監督の油」の中で語っている。

 また仲代が後のインタビューで語っているが、役所は入塾式に遅刻してきて、仲代はかなり怒った。役所の遅刻癖はその後も続いて、「おまえは時間通りじゃなく、1時間、2時間前に来ておけ」と仲代に叱られたと役所は言っている。そのせいか今では、現場に早く行かないと落ち着かない体質になったそうだ。

 入塾した翌年には仲代の主演作「闇の狩人」(1979年)で映画デビューし、岡本喜八監督の「英霊たちの応援歌 最後の早慶戦」(79年)にも出演。舞台でも少しずつ大きな役を演じるようになり、連続テレビ小説「なっちゃんの写真館」(80年・NHK)に特攻隊員・香山少尉役で出演したことが転機になった。NHKでは他にも大河ドラマ「獅子の時代」(80年)に自由党員役で出演し、翌81年には大河ドラマ「おんな太閤記」に織田信長の三男・信孝役で出演。このドラマのプロデューサー・渋谷康生の目に留まり、大河ドラマ「徳川家康」(83年)の織田信長役に抜擢された。野性味あふれる彼の信長は一躍人気を集め、この演技でテレビ大賞新人賞やエランドール賞の新人賞を受賞して、役所広司の名前は世間に広まった。

 こういう映像面での活躍の傍ら、「無名塾」でも得難い友人と出会う。それが彼の2期下で入塾してきた益岡徹である。役所と益岡はよく一緒に酒を飲みに行って、酒のにおいをさせながら塾の稽古をしたという間柄。その後、益岡は映画「マルサの女2」(88年)で演じた新人査察官役で注目を集め、役所の映画にも「東京原発」(2004年)や「象の背中」(07年)、役所の初監督作品「ガマの油」(09年)、最近の「銀河鉄道の父」(23年)まで、役所の出演作によく助演している。「彼がいると安心できるんです」と役所は語ったことがあるが、俳優としての青春時代を一緒に過ごした友として、益岡は特別な存在なのだろう。

「徳川家康」の翌年、NHKでは水曜日に時代劇枠を新設し、その第1弾として吉川英治原作の「宮本武蔵」(84~85年)を1年間放送した。役所は主役の宮本武蔵に抜擢される。これが彼の初主演ドラマで、荒々しくもパワフルな青年・武蔵をはまり役で演じた。宿敵・佐々木小次郎を演じた中康次も新人で、そのフレッシュな合わせが話題を呼んだ。これによって役所広司には、時代劇俳優のイメージが付きまとうことになる。(つづく)

(映画ライター・金澤誠)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください