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女子マラソンで2時間10分切り…日本は記録を追うより五輪一本に的を絞るしかない

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年10月26日 9時26分

女子マラソンで2時間10分切り…日本は記録を追うより五輪一本に的を絞るしかない

ルース・チェプンゲティッチ(C)ロイター/USA Today Sports

【スポーツ時々放談】

 マラソンの記録が伸び続けている。2時間切りが秒読みに入った男子に続き、女子でも記録が出た。

 10月13日に行われたシカゴで、ルース・チェプンゲティッチ(ケニア)が2時間9分56秒で女子初のサブテンを達成。男子のサブテンは1967年にクレイトンが福岡で出した2時間9分36秒が最初で日本選手第1号は78年別府大分の宗茂(2時間9分5秒)だった。

 チェプンゲティッチは、ハーフを1時間4分16秒で通過。25キロからの各5キロを15分32秒-15分43秒-15分39秒と刻んで後半は1時間5分40秒……スタートから10キロの記録30分14秒が、来年の東京世界陸上女子1万メートルの参加標準記録を6秒も上回っていた。恐れ入る。

 かつて女子マラソンは日本の天下だった。91年世界陸上での山下佐知子(銀メダル)を皮切りに、2013年の世陸の福士加代子の銅メダルまで、五輪と世陸でメダル15個を獲得している。2時間20分を切っている現役選手は前田穂南(2時間18分59秒)と新谷仁美(2時間19分24秒)だが、来年1月のヒューストンで日本記録更新を狙う新谷に、今回のサブテンは衝撃だろう。

 2時間20分を切ったランナーは歴代83人いて、エチオピアが36、ケニアが23……。チェプンゲティッチは、名古屋ウィメンズマラソンの優勝賞金が世界最高の25万ドルに跳ね上がった22、23年に来日して連覇し、賞金が15万ドルに戻った今年、姿はなかった。ジョガーはいないとさえいわれるアフリカの賞金プロと、マラソンに特異な伝統を持つ日本の環境を考えた時、一緒になって記録を追うのが賢明とは思えない。

 確かに厚底シューズによって日本の記録も伸びた。ただ、厚底開発は、そもそもが爪先走法であるアフリカ勢の活動域を広げ、選手寿命も延ばしている。日本は、4年に一度、暑くペースメーカーも賞金もない、持久力勝負のオリンピック一本に的を絞るしかない。東京大会では一山麻緒(8位=2時間30分13秒)、パリでは鈴木優花(6位=2時間24分2秒)が入賞した実績をどう生かすのか。

 記録狙いの平坦コースを排し、時期も五輪仕様に切り替えるなど、思い切った方針転換に踏み切る時期だ。代表選考会のMGCを統括する日本陸連が、路傍で思案投げ首、袖手傍観ではせっかくの伝統もしぼんでいく。

(武田薫/スポーツライター)

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