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小林綾子さんは時代劇「剣客商売」の「おはる」が俳優の転機に…「私の素に近い役柄でした」【その日その瞬間】

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年10月28日 9時26分

 レギュラーの役者にもゲストの方にも声をかけて自分の行きつけの店に誘って、ご飯とお酒をいただくのが恒例でした。スタッフもキャストも一丸となって作品を作る気持ちが強く、仲間を大切にされる役者さんだったと思います。

 時々は撮影所で鍋パーティーをやることもありました。藤田さんは鍋奉行だったんです(笑)。大きな鍋を3つ用意し、手の空いたスタッフが交代で野菜を刻んだりして準備を進める。その後煮ていくのですが、藤田さんは空いてる時間にいい感じでできてるかどうかのぞきに来るんです。私は「まさに鍋奉行!」と思って見ていました。

 その日の撮影が終わるとキャスト、スタッフがみんなで鍋をつつき、同じ釜の飯を食べてまた親睦を深めていく。結束の固い現場でした。

 冬のロケでは炭を入れて温めた一斗缶に当たって撮影開始を待つのですが、藤田さんはどなたかが一斗缶に当たっていると必ず話しかけてくださるんです。私にもよく話しかけてくださりました。「これはこうだよね」とかお芝居のことから世間話まで。撮影の合間だけでなく、お酒の席でお話ししてくださることには武勇伝など面白い話もたくさんありました。温かい心遣いをされるとてもお優しい方でしたね。

 私の役の「おはる」は藤田さん演じる小兵衛と40歳違う、いわゆる年の差婚をした明るくて天真爛漫なキャラ。年の差があるから小兵衛にはずっと元気でいてもらわなくちゃと卵やすりおろした山芋など精のつくものばかり食べさせるという(笑)。

 私が過去に演じました「おしん」は耐え忍び我慢するイメージの役でしたが、おはるの役をいただき、見てくださる方たちの印象が変わったようです。今振り返ると大切なターニングポイントになったと思います。もちろん「おしん」の後もいろんな役をやらせていただきましたが、おはるは私の素に近い役柄でした。

 東京での仕事を終えてまた京都で「剣客商売」の仕事に入ると、嵯峨野に建てられた小兵衛の家がすてきな自然の中にあり、実家に帰ってきたようなホッとした気持ちで演じることができました。

 藤田さんと2人のシーンが多いので、台本はもちろんあるのですが、藤田さんと「こうしてみようか」「ああしてみましょう」と話して、そのアイデアが採用されることもよくありました。

 藤田さんは撮影前にじっくり考えられて、必ず監督さんに「ここはこうでどうでしょう」と相談されていました。

 すると、私は「藤田さんがこうされるなら私はこうしてみようかな」と。現場であれこれ考えながらお芝居を作っていく楽しみを教わりましたね。

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