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声優の宮村優子さんは「バセドー病」と「橋本病」の両方を経験…壮絶闘病を語る

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年10月28日 9時26分

 橋本病がわかったのは、仕事で久しぶりに一時帰国したとき。マネジャーが私の顔を見るなり驚いて、「病院に行った方がいい」と言ってくれたのです。動作は遅いし、声は出ていないし、大変だと思ったそうです。

 すぐに病院に行くと、橋本病と診断されました。この病気は認知機能も落ちてしまうので、記憶があまりありません。

 甲状腺ホルモンの数値を上げる薬を処方され、オーストラリアに戻ってからは現地の甲状腺専門病院に通いました。採血して、数値を見て、薬が出る、という流れは同じでしたが、ただひとつ違ったのは、初診で脚気の検査をされたこと。いまだに意味不明です(笑)。それから2年ほど通院して薬を飲まなくてもいい状態になり、今はおかげさまで正常値をキープしています。

 バセドー病と橋本病の両方を経験して、体がバセドー寄りになっているか、橋本寄りになっているかを察知できる感覚が身に付きました。人によって感知するサインは違うようですが、同じ病気の友達にも聞いてみたら、「その感覚はある」と言っていました。

 私の場合、バセドー寄りになると動悸が増えて、呼吸が浅く速くなるんです。深い呼吸をしようとするけれど治らない。そうなったら、休むサインです。橋本寄りのサインは、舌の奥が重くなる感覚。どちらにしてもサインが出たら早め早めに体を休めるようにしています。いつもシーソーの真ん中に立って、どちらかに傾かないようにバランスをとっている感じです。

 オーストラリアでは、判断力がきちんと働かないうえに、気心の知れた友達もいなくてつらかったです。でも頑張ろうと思えたのは、「名探偵コナン」のプロデューサーの言葉です。努力しても声が出なくて、「レギュラーを降りたい」と申し出たとき、「理由が病気なら、きっと治るから続投してください。余計なことは気にせず治してください」と言われたのです。クオリティーが良くないのに、「OK」になっていることもわかっていました。それでも、私に帰る場所を残してくれたことが力になりました。

 じつは私、根がオタクで人見知りなので友達をつくるのが苦手なんです。でも病気を経て「お友達って大事だな」と学びました。最近はゲーム配信友達ができて、生存確認してもらっています(笑)。

 同じ病気でも入院するほど重いケースもあるので、自分が経験したことがすべてじゃないと自覚して、決して侮らず、自分と向き合って生きていこうと思っています。

(聞き手=松永詠美子)

▽宮村優子(みやむら・ゆうこ) 1972年、兵庫県出身。90年代から声優として活躍。「新世紀エヴァンゲリオン」シリーズの惣流・アスカ・ラングレー役、「名探偵コナン」の遠山和葉役など人気作品に数多く参加している。ほかにもドラマや映画で女優を務め、シンガーとしてCDも多数。著書に「声優 宮村優子 対談集 アスカライソジ」がある。

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