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梅酒とレモンサワーで「食中毒」対策ができる? 高知大名誉教授が寄稿

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年10月29日 9時26分

梅酒とレモンサワーで「食中毒」対策ができる? 高知大名誉教授が寄稿

白い斑点は菌(本人提供)

 米マクドナルドのハンバーガー、山梨県の焼き鳥店での白レバーとささみ、横浜市のデパートでのうなぎ弁当……。いずれも最近報じられた食中毒問題に関する食品だが、高知大学の松岡達臣名誉教授が食中毒に関する興味深い実験を行っている。その内容を寄稿してもらった。

■市販のレモン缶酎ハイで99%以上死滅

 空腹時に口から入った微生物の多くは、pH1~2という強い酸性の胃酸によって胃の中で殺菌される。しかし、酸に対して耐性のある微生物は完全には殺菌されず、生き残ったものが腸に移行して食中毒の原因になる。

 一方、弱い酸や、酒類に含まれるエタノール(エチルアルコール)は、単独では殺菌力が弱い。しかし弱い酸とエタノールを混ぜて「酸性エタノール」にすると、殺菌力が増大する。 

 筆者の実験では、塩酸(pH3)とエタノール(10%)の混合液で酸耐性の肺炎桿菌を懸濁処理(除菌効果の実験で最もよく行われる方法)。すると塩酸のみ、あるいはエタノールのみで処理した場合に比べて、菌の生存率は1万分の1以下にまで低下した。

 この結果から、食事のごく初期であれば、酒類を飲むことで胃の中の食中毒菌を殺すことができると考えられる。しかし、食事が進むにつれ胃酸は希釈され、酒類による殺菌効果はなくなってしまう。

■焼き鳥を食べるとき特におすすめ

 一方、酸味が強い酒類なら胃液のpHとは無関係に食中毒菌を殺菌できるのではないだろうか?

 酸味が強い酒といえば、梅酒、レモン酎ハイ、ワインなど結構たくさんある。そこで筆者らの研究グループ(共同研究機関:東京顕微鏡院)は、「カンピロバクター」に対する梅酒やレモン酎ハイ(缶酎ハイ)の殺菌効果を調べてみた。

 カンピロバクターは、加熱不十分な鶏肉や鶏レバーなどによる食中毒の原因菌であり、近年はこの菌による食中毒が、細菌性食中毒発生件数の約70%を占めている。

 写真の白い斑点は寒天培地に形成されたカンピロバクターのコロニーだ。この実験では①水②梅酒③レモン酎ハイ④焼酎水割りで菌を10分間ほど懸濁処理した後、一定数を寒天培地に植菌した。結果、焼酎の水割りでは菌はほとんど死ななかったが、梅酒やレモン酎ハイでは、99%以上の菌が死滅した。

 今回実験に使ったレモン酎ハイは、レモン果汁を3%含む市販の缶酎ハイであるが、居酒屋などで出されるレモン酎ハイの酸味はそれほど強くないかもしれない。酸味が弱いと、強い殺菌効果は期待できない。

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