外食はスタバもマックも減収なのに…「サイゼリヤ」が過去最高益を叩き出した秘密
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年10月31日 9時26分
サイゼリヤは過去最高益(C)日刊ゲンダイ
世界的なインフレの波が外食企業を悩ませている。10月22日にはスターバックスが、2024年7~9月期で世界の既存店の売り上げが前年比マイナス7%になると発表。マクドナルドも前四半期は、来客数の減少で6期ぶりの減収となっていた。
その一方、同じ外食にあっても好調なのがサイゼリヤだ。同社が9日に公表した24年8月期決算では、売上高が22.5%増、純利益は58%増の81億円で、過去最高の数字を叩き出しているので、まさに絶好調という勢いだ。
サイゼリヤといえば、周辺環境がどうなろうと「値上げをしない」ことでファンの心をつかみ続けてきた。ただ何もしないままでは到底通用しないので、値段は据え置きながらサイズダウンを行ったり、7月10日には優待を廃止したことで、株価が急落するなどということもあった(もっとも廃止と同時に増配が行われているのだが)。
「同社はコスト高に対し、メニューや内容量の見直しで対応。そのうまさについては、顧客離れにつながるどころか逆に、それによって得られるお得感から、複数のメニューを頼む顧客を囲い込み、客単価を毎年引き上げていて、プラスにつなげているという事実を見れば明らかです」と同業他社の幹部も、「敵ながらあっぱれ」と舌を巻く。
だがそれだけでは、過去最高益とはなかなかならない。そこには別の大きな理由がある。実際、国内に限れば営業利益は約15億円の赤字なのだが、これをカバーして余りあるのが、中国・台湾・シンガポールのアジア事業だ。特に約500店舗を展開する中国を中心に、会社全体の約8割にも当たる約116億円の営業利益をこの地域で稼ぎ出しているのだ(前期比約37%プラス)。
中国といえば世界的なインフレとは別に、コロナ禍からの立ち上がりが悪かったところに、不動産バブル崩壊もあって個人消費が大幅ダウン。「貧乏人セット」なる、3元(約60円)の朝食に人気が出るほど、デフレ経済真っただ中だ。つまり同社は、インフレにも価格据え置きで対応し、デフレならば独壇場とばかりに強みを発揮しているというわけだ。そしてこの追い風の下、さらなる勝負を仕掛けようとしている。
「中国では1000店舗の出店を目標に、広州の工場建設は既に着工されています。また国内でも、岐阜県で新工場を稼働させるべく、10月17日には地元の地権者らと覚書を交わしました。同社は23年5月に青森・五所川原市に初出店したかと思えば、既に5店舗を展開するなど、地方の出店攻勢に出ています。岐阜の工場建設では、まだまだ手薄な東海・北陸の出店を増やし、10年後には現在の1000店舗から1500店舗にするとしています」(産業経済紙記者)
インフレの厳しい経済環境の下、捨てる神がある一方、拾う神もあるといったところか。
(ジャーナリスト・横関寿寛)
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