金融庁職員らのインサイダー疑惑相次ぎ…監視委はこうして“標的”に狙いをつける
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年10月31日 9時26分
東証が入るビル(C)日刊ゲンダイ
【経済ニュースの核心】
インサイダー取引──などともったいぶった名前が付いているが、何のことはない。要するに「賭場」での「いかさま」であり、「インチキ」である。
しかもその賭場の運営主体や規律づけを担う組織の一員自らが不正に手を染めていた疑いが濃いというのだから余計にタチが悪い。何も知らずに賭け金を積んだプレーヤーからすれば、はらわたが煮えくり返る気分だろう。
金融庁の職員や東京証券取引所の社員による、株式売買を巡るインサイダー疑惑が10月中旬以降、相次いで発覚した。いずれも8月ごろから証券取引等監視委員会の強制調査を受け、監視委は東京地検特捜部への告発も視野に全容把握を進めているとされる。
強制調査を受けた金融庁職員は裁判所から出向中の30代男性裁判官で、2019年に任官。大阪地裁判事補などを経て今年4月から最高裁の定める制度を利用し同庁に出向していた。一方、東証の方は20代の若手社員だ。
配属されていたのは前者が企業開示課、後者は上場部開示業務室。ともに企業の開示資料の審査などを行うセクションで、公表前のTOBやM&Aなどの重要情報にもろに接触できる部署。前者は課長補佐(当時)の役職にもあった。
関係者によると、両者はこうした立場を悪用して未公表のTOB情報などをもとに複数回、複数銘柄にわたって株取引を繰り返したり、親族に売買を推奨。数十万円から数百万円の利益を懐に入れていた疑いがあるという。
監視委の目は厳しい。当局筋によると、職員は常に個別株の動向に視線を配る一方、市場関係者から情報を収集。疑わしい取引を検知するシステムからのデータなどを総合的に分析して“標的”に狙いをつける。
そのうえで売買記録などからインサイダー(内部関係者)をあぶり出す。必要とあれば親族や知人らへの強制調査も辞さない。
「TOB発表前の特定のタイミングで売買が続くのは明らかに不自然。普段は売買の少ない銘柄の出来高が急に膨らんだり、株価が高騰したりすれば、まずはインサイダーを疑って調査する」と前出の当局筋。中小型株ほど露見しやすいというわけだ。
インサイダー取引は無論、犯罪(金融商品取引法違反)だ。5年以下の懲役または500万円以下の罰金。併科もあり得る。いかさま賭博で失われるのは「信頼」だけではない。
(重道武司/経済ジャーナリスト)
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