健康寿命は経済力で決まる(8)分業はジェネリック不足を解消するか
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月1日 9時26分
写真はイメージ
今年の7月4日、当時の武見厚生労働大臣が、ジェネリック業界のうち13社の代表を呼んで業界再編・産業構造改革の考えを示しました。一向に収まらないジェネリック不足に業を煮やしたのでしょう。
ジェネリック業界は中小企業が多く、同じ有効成分の薬を複数社が製造する(各社とも商品名も価格も同じ)という、独特の構造をしています。1社当たりで見ても、数種類ないし数十種類を製造しています。生産ラインは限られていますから、同じラインを組み替えながら多品種少量生産を行っているのです。そのため経営効率が悪いと以前から言われてきました。そこで、武見大臣は「1成分5社程度が理想」という改革の目安を、経営者たちに伝えたのです。
確かに生産の集約化は必要でしょう。しかし、それだけで本当にうまくいくのでしょうか。実はジェネリックの3割以上が赤字といわれています。薬価が1錠4円台、5円台というものも数多くあり、昨今の原材料や電気・水道料金の値上げなどもあって、採算ラインを割る品目が今後さらに増えることが懸念されています。
そのうえ国の医療政策が頻繁に変わるし、薬価は毎年改定(主に安いほうに)されるため、メーカーは思い切った設備投資や人材投資ができません。また、「1成分5社程度」というのも不安が残ります。何らかの理由で1社が出荷停止や限定出荷に陥ると、その分を他社が肩代わりしなければなりません。しかしジェネリックは儲けが薄いため各社ともギリギリの生産計画を立てるはず。他社がコケたからといって、すぐに増産に応じられないでしょう。
実際、現在のジェネリック不足でも、すでに同様のことが生じています。どこか1社が出荷停止になると、それがドミノ倒しのように波及して全体的に品薄に陥ります。そこで足りない薬を増産しようとすれば、他の薬の生産を一時的にストップせざるを得ず、今度はその薬が品薄になる、といった悪循環を繰り返しています。
要するに業界全体に余裕がないのです。薬価を引き上げるなどして儲けが出やすくしないと、ジェネリック不足はいつまでも解消しないのではないでしょうか。=おわり
(永田宏/長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授)
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